|
平成十七年二月二十一日(月曜日) 午前九時三十分開会
─────────────
本日の会議に付した案件
○日本国憲法に関する調査
(今後の日本と憲法について)
─────────────
=会長(関谷勝嗣君)=
ただいまから憲法調査会公聴会を開会いたします。
日本国憲法に関する調査を議題といたします。
本日は、「今後の日本と憲法について」、お手元の名簿の八名の公述人の方々から御意見を伺います。
午前は、法政大学法学部教授五十嵐敬喜君、岡山県議会議員小田春人君、日本民主法律家協会事務局長・弁護士澤藤統一郎君及び日本弁理士政治連盟会長森哲也君、以上四名の公述人の方々に御出席いただいております。
この際、公述人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
本調査会は、平成十二年一月に設置され、日本国憲法について広範かつ総合的に調査を行ってきたところでございますが、本日は、「国民とともに議論する」という本調査会の基本方針を踏まえ、憲法のこれからの在り方を私たちはどのように考えるべきか、また憲法を生かすためには何が必要か、参議院の在り方なども含め公述人の方々から幅広く忌憚のない御意見をお述べいただき、本調査会の調査に役立ててまいりたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。
議事の進め方でございますが、まず公述人の方々からお一人十五分程度で順次御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えをいただきます。
なお、公述人、委員ともに御発言は着席のままで結構でございます。
それでは、まず五十嵐公述人、お願いをいたします。
─────────────
〔省 略〕
─────────────
=会長(関谷勝嗣君)=
次に、松井孝治君。
=松井孝治君=
民主党の松井孝治でございます。
四人の公述人の皆さん、本当に今日は貴重な御意見、ありがとうございました。
できるだけ四人の方、皆さんにお伺いしたいものですから、まず最初に、一番若い高見公述人に私の御質問をして、これは最後に答えていただければ結構です。少し考える時間があった方がいいかと思います。
九条について、そして前文についてお触れになられました。私は、むしろ高見公述人のような若い方が、この一九四六年における、これはある種の日本国憲法における宣言文だと思うんですね、前文というのは。もし今、この時代において新しい憲法をつくる、あるいは憲法を改正するとしたときに、一部分、もうこれは時代に合わないから削除すべきだというお話がありましたが、高見公述人であれば、どういう概念、理念をこの憲法の前文にむしろ足すべきではないかというようなお考えをお持ちであるか。あるとしたら、どういう理念をこの憲法前文に、例えば二〇〇五年、二〇〇六年、現時点で我々が新たな憲法をつくるとしたときにどういう理念が必要だと考えられるか。これは一番最後にお伺いをしたいと思います。
その上で、まず山本公述人にお伺いをしたいと思いますが、憲法の財政関係の記述が非常に手続的だというのは、私も全く同感でございます。決算委員会にも山本公述人、お見えいただいたことがあるわけでございますが、山本公述人がおっしゃっている予算循環過程を確立するというのは、これは非常に大事なポイントだと思いますし、また、参議院の在り方を考える上でも、そこにおける決算あるいは政策評価の位置付けをより確立されたものにするということが必要だと思います。
その意味で、現行憲法九十条の会計検査の規定というものは、あるいは決算の規定というものについては、一般的には報告説的にとらえられていて、拘束力がないというふうに言われています。具体的にこの九十条、あるいは財政に関する記述についてどのように、具体的にこの予算循環過程を確立するためにどのような縛りを加えるべきだとお考えなのか、具体的に御意見をお聞かせいただきたいと思います。
=公述人(山本清君)=
非常に難しい御質問であるわけでございますが、まず現行の憲法学者等のいろいろな諸説を拝見しておりますと、必ずしも、今先生御指摘のように、憲法九十条は単なる報告であると、決算は単なる報告事項であって議決事項じゃないというのは、これは多数説でございますが、しかし、一方においては、第八十三条におきまして、「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。」という条項がございます。財政を処理する権限の一部として、当然、決算審査もあるというふうに読めるわけでございますから、そういった点からいきますと、決算審査というのも当然国会の議決に課すべきであるというような憲法学者の論拠もございます。したがって、直ちに現行の第九十条でもって決算は単なる報告事項であるということは必ずしも言えないのではないかというのが一点でございます。
ただ、それは非常に少数説であろうと。したがって、何らかの改正が必要ではないかということをもしそれを是といたしますと、これはやはりその第九十条の場合におきまして、この検査報告に対する予算審議についての何らかのその拘束といいますか、担保といいますか、担保ができなければしんしゃく条項的なものがやはりないと、ここで決算から予算へのフィードバック、あるいは参議院がもし決算を重視されるということであれば、なおさら決算審査の予算への何らかの格好のしんしゃく条項あるいは尊重条項というのがやはり必要ではないかというふうに考える次第でございます。
以上でございます。
=松井孝治君=
ありがとうございます。
永久公述人にお伺いしたいと思いますが、道州制の導入ということを憲法上位置付けるという御提案をされています。私も地域主権ということには大いに共鳴するわけでありますが、その際、広域自治体である道州と基礎自治体との関係が一つの問題になってこようと思います。補完性の原則ということがよく言われますけれども、その原則に立てばむしろ、例えば基礎自治体と中央政府との役割分担を先に議論すべきなんではないかという議論もあると思うんですが、その辺りについて、地域主権のつくり方ですね。まず国と道州との関係を切り分けてあとは道州の中で任せるという考え方と、まず基礎自治体の権能を議論すべきではないかという考えについて公述人の御意見を聞かせていただきたいと思います。
=公述人(永久寿夫君)=
基礎的自治体の権能を議論するというのは非常に重要なことだと思います。
我々の社会の成り立ちからいいますと、小さな共同体から生まれて、それから、そこでできなくなったらもうちょっと大きな広域的なものをつくっていく、更には国になるというような形でして、そういう順番から考えましたら、基礎的自治体の権限というものを最初に考えるというのは重要かと思います。
ただ、今現在の状況からどうやっていくかということに考えたときに、やっぱり州というものを最初につくって、そこに国が持っている大きな権限の幾つかを持ってくるというふうにしてから、それから基礎的な自治体にどう振り分けていくかというような方がやりやすいんではないかなというふうに思います。今、県があって、それを飛ばして自治体が、どこから何持ってくるというようなことをやるよりも、まず、大きな国を幾つか小さな国に分けるというような感覚でやった方がやりやすいんではないかなというふうに一つ思います。それと同時に、広域的なもので何かいろいろやらなきゃいけないことがございますので、そうしたことも考えますと、広域をまず最初に考えるべきかなというふうには思います。
ただ、基礎的自治体の役割、同時に、何が重要なのかということが議論されるのは当然かなと思います。
以上です。
=松井孝治君=
ありがとうございます。
同時に、永久公述人は、ある意味では、地域主権国家をつくるためにも今の二院制を国民代表議院と州代表議院というふうに変えるという御提案をされておられます。
御提案をされているんですが、その州代表議院というのは、当然、国と各州との関係についての議論をするというふうに想定されますが、その機能がどういうものなのか。もう少し具体的に、例えばドイツ型の連邦参議院を念頭に置いておられるのかなというふうに想像はするんですが、具体的な機能はどういうものなのか。それと同時に、例えば山本公述人がおっしゃったように、少し決算中心のチェック機関に、この第二院といいましょうか、参議院は持っていくべきではないかという議論もありますが、その辺りの、この御提起のある州代表議院の具体的な機能、権限、どう考えておられるのか。
それから、時間もありませんので、ちょっと質が違う質問ですが、永久公述人の御提案では、会計検査院は国会に置くというふうにされていますね。このねらい、これは山本公述人に対して先ほど同僚議員の方から御質問もございましたけれども、なぜそれは例えば独立機関ではなくて国会に置くべきなのか、あるいはその受け止めたときの国会が果たすべき役割、その辺りまで含めて御意見を伺いたいと思います。
=公述人(永久寿夫君)=
まず一点目ですけれども、我々の道州制の中で想定されている国の役割といいますのは、安全保障、外交ですとか、非常にマクロな利益に関するものばかりでございます。その段階で、国民代表と州代表の両院の差というものは、現在の衆院と参議院ぐらいのものとしか我々は想定しておりませんで、多少国民代表議院の優位がございますけれども、現状とほぼ変わりありません。
どういう役割かと申しますと、非常に国全体のマクロな利益だとしましても、国全体の部分と、あと州個々がかかわる利益とかといろいろあるかとございます。そうしたものを調整する場ということを考えておりますと同時に、ここでは、先ほど議論しませんでしたけれども、いろんな分野を分けましたけれども、残っている部分があります。その部分に対しては、国と州の契約というような形で、国と州の代表が議論して決めていくべきではないかということでこの州代表議院というものを考えております。
会計検査院の方ですけれども、国会に帰属させる。今の状態は独立しているというふうに解釈できますけれども、人事の面ですとか様々な面で行政に割と依存しているのではないかなというふうに客観的に見えますけれども、そもそも行政、まあ財政の方詳しくございませんけれども、財政という、行政が運営しているものをチェックする機関が行政にかなり影響を受けるような形であってはいけないだろうというふうに思います。ですから、本来行政府をチェックする機能である国会が、国会に会計検査院を附属させることによって、それを基に国会が行政府を十分チェックしていく、機能を監査していくという必要があるんではないかということからこういうふうに考えました。
以上です。
=松井孝治君=
済みません、永久公述人にもう一つ伺いたいんですが、今の議院内閣制の根幹であるところの内閣と議会との関係を相当変えた御提案、大統領制に近い、天皇制は維持しつつも大統領制に近い御提案だと理解しておりますが、特に閣僚、議員との、これよく議員との兼職を禁止している、要するに閣僚は議員から選ばない。まあ、内閣総理大臣は議員から選ぶということですよね。内閣総理大臣も議員である必要はないという、そういう意味では本当に議院内閣制を根本的にいじるという御提案であると思いますけれども、この具体的な、最初に少しおっしゃいました、総理大臣と与党ないし議会との乖離ということをおっしゃいましたけれども、なぜそこまで、よく言われる議論として、衆議院を執行の院として参議院をチェックの院とするならば、参議院は利益相反を排するために閣僚を送るべきではないという議論はよくありますが、衆議院、国民代表院まで含めてそれを行政執行機関である内閣と遮断するという、そこまでしなければいけないということの背景というか、思いというものを少し述べていただきたいと思います。
=公述人(永久寿夫君)=
これは我々会社に勤める民間人の感覚でございます。トップである首相、我々にとってみれば社長ですけれども、社長がこういうような政策を実現しようと思っていろいろ努力していると、これで進むぞというようなときに、重役それぞれが右向いたり左向いたりとして、全体的にはどこ飛んでいくのか分からないというような状態は企業経営としてはあり得ません。ですけれども、今の内閣を見てみますとどうしてもそういうふうに見えてしまう、実際は分かりませんけれども。首相がこうやっている、だけれども実際の内閣の大臣の方々は、閣僚の方々はどうもそれとは違う、そうしたことが、行政府として一つの方向性に進もうとしているときになかなか改革も含めて政策の実行が進まない一つの要因ではないかということで、これを提案させていただいております。
ただ、政党政治がしっかりしてといいますか、政党政治がきちっとした形でできて、一つのマニフェストに向かって与党が一体化して一つの行政府を展開していくんだということができている姿であるならば、私はそれでも十分だろうというふうに思っております。
以上です。
=松井孝治君=
永久公述人に最後に伺いたいのは、改正条項で国民投票要件を排しておられます。これは、逆に言えば、首相公選でそこに国民の意思が反映している、一点に集中しているから、そこでガバナンスが十分効いているということなのかもしれませんが、しかしおっしゃったような、国民が具体的に政治を左右するという意味においては、憲法のような問題、憲法の在り方について、国民投票要件を排するというのはやや逆行しているような気もするんですが、その点についてどうお考えになっているのかお伺いしたいと思います。
=公述人(永久寿夫君)=
個人的にはおっしゃるとおりだと思います。これは、我々がこの私案をつくったときに、この条項に関してはもめたところでございまして、私は、今、松井先生がおっしゃったとおりの議論をしておりました。
ですから、せっかくこの国民に直接に参政権というものを首相公選のところで言っているわけですから、こうしたところでも国民の投票によって最終的に決めるというようなことがあってもいいかと思います。ただ、今の条文におきましてはなかなかそれもやりにくい状況ですので、そこの部分はもっと簡単にできるような形にした方がいいかと思います。
以上です。
=松井孝治君=
赤石公述人に伺いたいと思います。
今日の公述人、八人いらっしゃる中で赤石公述人が唯一の女性の公述人であり、そういう観点も踏まえた御意見というのを重みを持って伺わせていただきましたが、その中で、二十四条の精神を尊重しなければいけないというのは私も全く同意見なんですが、九条の点について伺いたいと思います。
二十四条の件で公述人の方からは、幾つかの最高裁判決が非常に重要な役割を果たしたというお話がございました。しかしながら、憲法全般について申し上げると、必ずしも最高裁は統治行為論などの壁もあって、違憲判決といいましょうか、憲法についての判断を留保するケースがこの間非常に多いわけですね。
そういう意味において、今の状況というのが本当にいいかどうかって私ちょっと疑問があると思っていまして、具体的には、永久公述人及び高見公述人からお話がありましたが、憲法と、九条の規定と実態の乖離、そして九条の規定にシビリアンコントロールが十分位置付けられていない、あるいは、例えば自衛隊の海外派遣についての立法府の関与というような非常に重要な点が位置付けられていないような点をどう解釈するか。また、その辺りの九条について言うと、最高裁がなかなか、踏み込んで具体的に今の状態についての判断をどうしても差し控える傾向がある。
そのような状況の中で、憲法九条というものを全く触らないのが本当にいいのか、それともある程度、お二人の公述人から提案があったようなことはある意味ではそれはリスクを冒すかもしれないけれども、しかし歯止めをきっちり憲法上書き込もうじゃないかという議論もあろうかと思うんですが、そのような点についての、九条についての改正についても全く不要なのか、あるいはそれは中身次第なのか、その辺りについての御意見を伺いたいと思います。
=公述人(赤石千衣子君)=
御質問ありがとうございます。
ちょっと抜かしてしまったんですけれども、時間がない関係で、二十四条、十四条についてはそういった憲法判断が裁判所であることによって積み重ねられてきた、そういった歴史があって、九条については残念ながらそういった判断がなかったことを非常に私としても残念に思っております。
ただ、ですから、九条を実現するための営みというのが非常に、何というんでしょうか、現実的なものになってこなかった歴史というのがあり、実態との乖離というのは確かにあると思いますが、私としては、九条を実現していく過程をどのようにしていくのかを国会の中でもっと議論していただきたいというふうに思っているわけです。
それで、安全保障政策について私は余り述べられることはないのですが、やはりきちんと、歯止めをというような案よりは、九条を実体化する試みがあり得るのではないか。それで、地域の安全保障で、北東アジアの非核地帯、これは民主党も提案していらっしゃるかと思うんですけれども、いろんな党でかなり言及していらっしゃると思いますが、そういったことも含めて外交の政策をしていくことの努力の方が必要ではないかというふうに申し上げたんです。
=松井孝治君=
じゃ、残りの時間、二分ぐらいだと思いますが、高見公述人、その範囲で述べられるかどうか分かりませんが、高見さんが考えられるあるべき前文の理念について、もしよろしければ御説明いただきたいと思います。
=公述人(高見康裕君)=
お答えいたします。十分な時間をいただきまして、ありがとうございます。
国家の最も重要な役割というのは、私述べましたように、国家の平和と繁栄を維持増進することであると考えております。したがって、憲法の一番初めの宣言たる前文には、国際社会において日本がどのように生きていくかということを示す、宣言すべきであると考えます。より詳しく言えば、日本が国際社会においてどのような外交姿勢を取っていくかということをここに宣言することが望ましいのではないかと思います。
外交の目的は、今どのような理念とおっしゃいましたけれども、私は外交の目的は理念の追求ではないと考えております。例えば、過去を振り返りますと、共産主義といったイデオロギーや特定の理念あるいは市民革命などを他国に押し付けようという外交というのはことごとく失敗してきたというのが歴史の教訓であると、私はそのように考えております。各国にはそれぞれの歴史があり伝統があり、また宗教もあり、様々な国内事情がございます。したがって、例えば自由や民主主義あるいは人権のような原則というのは、我が国が追求すべき原則でありますけれども、それを外交の目的とすべきではないと考えます。
したがって、例えばですけれども、日本は世界の平和と繁栄、それのみのために積極的に努力することを宣言し、それによって日本国及び日本国民の平和と繁栄の維持増進を実現することを目指すといったようなシンプルな前文にすべきであると考えております。
以上です。
=松井孝治君=
ありがとうございました。終わります。
*調査会の全会議録は、下記サイトをご参照ください。*
http://www.sangiin.go.jp/japanese/frame/joho2.htm
|