【2003年9月24日 日本経済新聞 夕刊(5面)掲載】 
政策ごとの数値目標を明記し、有権者に具体的な選択肢を提示するマニフェスト(政権公約)。政策本位の政治を実現するための重要な手段だが、政界では「そんなもの作っても票は増えない」と冷ややかな声が少なくない。主要政党がきちんとマニフェストを示し、政策で争う選挙の実現を目指し、若手国会議員たちが奔走している。
マニフェスト普及運動の中心になっているのが、自民、民主両党など超党派で七月に結成した「政権公約推進会議」。ベテラン議員も参加しているが、約六十人のメンバーの大半は当選三回以下だ。
十八日にマニフェストの素案を発表した民主党の松井孝治参院議員(43)は推進会議の事務局次長を務める。「国民との契約という感覚がないから、政治家なんて誰がやっても同じじゃないか、という政治不信が生まれる」と強調。与野党を問わず掲げた政策を必ず実現する姿勢を見せなければ、政治離れが進むだけで、選挙を真剣勝負の場とする必要があるとみる。
「マニフェストは野党の最大の武器だ」と語るのは同じ民主党の島聡衆院議員(45)。無党派層に浸透するには、従来型の選挙戦では駄目というのが持論で、マニフェストなど冊子になった文書の頒布やホームページを利用した選挙運動を禁止した公職選挙法の改正を主張する。
ただ、民主党でも細野豪志衆院議員(32)は「マニフェストを掲げれば、いいかげんなことは言いづらくなる。与党を批判だけすればよかったころとは違ってくる」と野党有利説に否定的だ。
後援会主体の選挙運動を展開する議員が多く、マニフェストへの抵抗感がある自民党にも必要性を主張する議員はいる。推進会議の事務局長に就任した山本一太参院議員(45)は「具体的な公約を掲げることが自民党に有利なのか、という考え方は根強い」と認めながらも「自民党だけ具体論は言いません、というわけにはいかない」と力説する。
自民党内で小泉純一郎首相と反小泉勢力の対立が続くのは、選挙が政策本位ではなく、「抵抗勢力の人も小泉旋風で当選したため」というのが山本氏の分析。民主党との「マニフェスト対決」は、積極的に迎え撃つべきだとの考えだ。
公明党の斉藤鉄夫衆院議員(51)は「選挙を三回戦ってきて、公約をどこまで達成できたかとなると疑問が残る。マニフェストを掲げて戦うことが重要だ」と指摘する。
推進会議は、冊子頒布解禁のための公選法改正を目指しているが、二十六日からの臨時国会は途中で衆院解散が確実とあり、実現は難しそうだ。次期衆院選に間に合わなくとも、来年夏の参院選までに改正案を成立させたいと意気込んでいる。(政治部 木村久生)

▼ 公職選挙法
〈第129条〉選挙運動は候補者の届出のあった日から当該選挙の期日前日まででなければ、することができない
〈第142条〉選挙運動のために使用する文書図面は、規定するはがきとビラのほかは頒布することができない
▼ 総務省選挙部の見解
マニフェストが「候補者は当選後の政策についての目標を示した文書」であるなら、選挙運動性が認められ、告示前の配布は129条に違反する。告示後の配布も142条で禁止している文書図画に当たると考えられる。
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