【2004年3月31日 夕刊フジ 掲載】


〜 根深い天下り問題 〜

 昨日は旧スパウザ小田原を取り上げ、社会保険料の無駄遣いの実態を指摘した。その背後には、プロジェクトを推進した官庁幹部の天下り問題があったが、実は問題はさらに広く根深い。

 全国に256ヶ所ある年金福祉施設。それらを運営している財団法人・社団法人の94団体の常勤役員数は135人。そのうち厚生労働省の出身は124人にものぼり、実に9割が同省の天下りなのだ。同時に、職員として累積614人が天下っている。

 要するに、これまで年金福祉施設の見直しが行われなかった背景には、無駄な事業と分かりつつも先輩官僚の天下りに手を付けられなかったという問題があるのだ。

 この構造は何も厚生労働省に限ったものではない。政府全体に蔓延した問題なのである。

 国家公務員の民間企業への天下りには規制がある。たとえば国土交通省の道路局長がゼネコンに天下ろうとしても2年間はできないことになっている。だが、特殊法人や独立行政法人は、この天下り規制の対象ではないので、道路局長が道路公団にいきなり天下ることが可能だ。そして道路公団に2年在籍すれば、その後ゼネコンにはノーチェックで天下れるという仕組みである。官庁以上に業界への影響力を持つ特殊法人や独立行政法人を経由すれば、何故か天下り規制を逃れられるという、不可解かつ巧みな制度といえるだろう。

 政府の発表では、昨年の課長以上の退職者1285人のうち、財団法人308人、社団法人146人、特殊法人等74人、合計528人が天下った。しかし、現在の規制では、この年間500人以上の天下りにはまったく手が付けられないのが現実だ。

 私は何も官僚が憎くて天下り規制を主張しているのではない。官僚の中にも素晴らしい志や能力の持ち主は数多くいることは事実だ。問題は50歳そこそこになると肩たたきをして、後進に道を譲ると称して外郭団体に天下りさせる霞が関の慣行が、官僚のモラルを低下させていることだ。

 もちろん、それらの天下り先には様々な補助金や委託金が出る。各省庁のポケットといわれる特別会計などで、お手盛りで天下り官僚の仕事を作り人件費を守る。こうした仕組みは、税金の無駄遣い
あるのみならず、官僚の精神を確実にスポイルしている。

 国益ではなく自分の将来の天下り先のことを考えて仕事をする風潮を作り、無駄な事業と分かっていても先輩や自分の将来の職場をつぶさないために事業を温存する結果になるのだ。

 20代、30代前半の若手官僚時代には「国益」を語っていた人物が、30代後半から急速に「省益」に傾斜。40代前半には「局益」に、40代後半にはさらに矮小な「課益」に、そして50歳になると団体に天下り、その団体の利益を追求するに至る様子を見てきた筆者には、この天下りシステムこそが日本の官僚制を蝕んでいるのではないかという思いがこみ上げる。

 財政が破綻状況にあり聖域なき財政改革を行わなければ国家の将来がない現在、厳格な天下り規制を含めて抜本的な公務員制度を実施すべきである。次回もこの問題を取り上げよう。

 

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