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近聞遠見:「プラトン」にあやかって=岩見隆夫
※近聞遠見は毎日新聞内における岩見氏のコラムです。
(松井孝治が理事を務めるプラトンが紹介された記事です。)
週末、国会近辺をうろつく。
政界歳時記に欠かせないのは、国会裏のイチョウ並木だ。今年は暖冬のせいで、まだら模様が続いたが、ようやく黄に染まった。
並木に沿う議員会館前の歩道は、教育基本法改正案などに反対する座り込みの列が延々と連なっていた。何枚もビラを渡され、なかに、
<小沢民主党依存の「慎重審議」要求運動をのりこえて闘おう!>
などと昔なつかしい(?)文句がある。
ところで、民主党は国会紛糾さなかの13日夕、東京・霞が関ビルで、<歴史に学ぶ政党政治>というテーマでシンポジウムを開き、鳩山由紀夫幹事長ら議員、学者、市民が参加した。
昨年発足させた同党のシンクタンク<公共政策プラットフォーム>(略称・プラトン)の1周年を記念するシンポだ。略称は、古代ギリシャの哲人にあやかり、哲学的な思索も深めようということらしい。
プラトンのプロジェクトの一つに加わる<日本の近現代史調査会>が党内に作られたのは昨年6月、当時の岡田克也代表が、
「民主党として一定の歴史認識を共有したい」
と提案したのがきっかけだった。政界では、この数年、靖国神社参拝問題などをめぐって<歴史認識>が一種のはやり言葉になっているが、どの党も正面から腰を据えて取り組んでいない。岡田はそこに着眼した。
調査会の座長には、政治家の歴史学習に執念を燃やす藤井裕久代表代行(当時)が、副座長に国際通の仙谷由人政調会長(同)が就き、衆参議員を集めて本格的な勉強が始まった。
藤井は二つの方針を立てる。まず勉強のスパン、昭和の戦争の話だけでなく明治までさかのぼる。次に、偏狭なナショナリズムとマルクス的歴史観を排す。
以来、坂野潤治、三谷太一郎両東大名誉教授、五百旗頭真神戸大大学院教授(当時)ら専門家6人を次々に招き、通算15回の連続講義を、
「さながら大学のゼミのような形」(藤井)
で重ねた。議員の勉強だけにとどめるのはもったいないと、このほど講義録を「歴史をつくるもの」(中央公論新社)というタイトルの上下2冊にまとめ出版した。
この記録、人間臭く、すこぶる面白い。たとえば、05年6月16日、民主党本部での坂野の講義はこんな調子で始まる。
「1週間前に『二つの日中戦争と民主主義』という題に決めた理由ですが、仙谷さんは『浜口雄幸内閣の平和と民主主義、あそこをやってくれ』と。そのお電話のときに伝言で、藤井さんは『山県有朋の主権線と利益線、あの辺を聞きたい』と」
さらに、続く。
「私の家では仙谷さんより藤井さんのほうが人気がある(笑)。自由党時代から、日曜日の朝はNHKの『日曜討論』から、その後のテレビ朝日の『サンデープロジェクト』に行く間に、洗濯物を干しながら、妻が『藤井さんになったら教えてよ』と。簡潔にして明瞭(めいりょう)で、軸がぶれないから。ファンが身近にいては、藤井さんご要望の日清戦争をやらざるを得ない(笑)」
<歴史に学ぶ政党政治>という新たな目標に向けて、政治家と学者が結んだ試みが始まっている。本のあとがきで、仙谷は、
<私たちはこの学びを通じ、きっと日本において「歴史」に学ぶ多くの政治家が輩出されるきっかけになると実感しました>
と書いた。学習は来年以降も続く。
迷走続きだった2006年政局の隅で、こんな地味な努力があった。名前貸しのプラトンもご満悦だろう。(敬称略)=毎週土曜日に掲載
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