【2008年3月29日 毎日新聞朝刊/web掲載】





     近聞遠見:ハエ取り紙に足とられ=岩見隆夫



 与謝野馨前官房長官が、

 「協議に応じない民主党は引きこもりだ。(道路特定財源を)急に一般財源化しろといっても、そんな軽業みたいなことはできない」

 と民主党をなじったのは、つい先日の民放テレビ番組の席である。ところが、27日、福田康夫首相はその軽業を演じてみせたのだ。

 <09年度からの一般財源化>を新提案し、民主党要求のほぼ半分をのんだ。
 しかし、あくまでガソリン税の暫定税率撤廃に固執する民主党は、引きこもり状態が続いている。
 「いまも、不調に終わった大連立構想というハエ取り紙に足を取られたままなんだ。2人とも飛び立てない」
 と福田と民主党の小沢一郎代表の奇妙な関係を、自民党の長老が皮肉るのを聞いた。ハエ取り紙とはまたユニークな比喩(ひゆ)だが、いまの異常政局には確かにそんな感じがある。福田が飛ぼうとすると、小沢が抑え、結局、2人とも飛べない。

 だが、民主党のなかには異論もある。松井孝治参院議員(次の内閣の内閣府担当相)は28日付のメールマガジンで、

 <福田首相の昨日の提案は評価できる内容だ。自民党内に引き続き強力な抵抗勢力を抱えつつ提案を行ったことを過小評価すべきではない>

 と民主党が協議に入るよう主張した。松井の論拠は、23日付のメルマガで示されていた。

 <改革の本丸は道路特定財源の一般財源化と考える。いまの財政状況と、特に医療・社会福祉の崩壊の実情を考えたときに、暫定税率の撤廃もさることながら、巨額の道路特定財源を一般財源化することの優先度が高い>

 と明快だ。十分な説得力を持っている。さらに暫定税率について、松井は、

 <暫定措置ではなく、一般財源として使用することに国民の納得を得るべきだ>

 とした。撤廃でなく、維持・活用論だ。これに同調する議員もでているという。

 民主党では、先に大江康弘参院議員が暫定税率撤廃の党の方針に反対を宣言、27日の参院国土交通委員会でも、

 「私はガソリン価格を25円下げるのはいまでも反対だ。政治家の信念である」

 とぶった。民主党幹部は、

 「大江1人が造反しても大勢に変わりはない」

 ともらしたそうだが、すでに1人ではない。

 ただ、松井と大江は暫定税率の維持では同じだが、大江が一般財源化にも反対しているところは違う。

 「一般財源化を主張するのであれば、改めてユーザーに是非を問うのが筋で、勝手にやるのは間違っている」

 というのが大江の立場だ。

 2人の主張からも、民主党にさまざまな議論が渦巻いている様子がうかがえる。それは自民党も同じで、全体の議論不足はおおいようがない。

 だが、この大詰め、松井メルマガでもっとも注目すべきは次の個所である。

 <民主党内には、ここは政治闘争であるとして、強硬な姿勢を貫く議員が多いのは事実だが、この(福田)提案への対応で、民主党の政権担当能力が問われている。

 政権交代に追い込む執念を優先するのか、それとも政権交代した際に本質的な構造改革を行う意思を表明するのか。私は後者の立場に立って、民主党の構想を国民の前に明らかにする絶好の機会がいまである気がしてならない>

 福田政権はピンチだが、一気に攻め落とそうとする小沢民主党も危ない橋を渡りかけている。

 双方、ハエ取り紙に足をとられ、もがいている図だ。松井の問題提起は足を抜く一つのヒントである。(敬称略)=毎週土曜日掲載

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 以上、左記サイトより引用。

岩見 隆夫(いわみ・たかお)

 毎日新聞東京本社編集局顧問(政治担当)1935年旧満州大連に生まれる。58年京都大学法学部卒業後、毎日新聞社に入社。論説委員、サンデー毎日編集長、編集局次長を歴任。
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