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皆さん、こんにちは。

松井孝治です。

本日は、イラクにおける奥参事官ほか外交官殺害事件について、若干の意見を申し上げます。いつものように長文になりますことを、お許しください。

実は、外務省の奥克彦参事官とは15年ほど前に、通産省職員と他省庁や、民間企業職員の交流研修で、ご一緒したことがあります。

私より二つほど年長の先輩でしたが、新聞紙上に記載されているとおりガッツのある論客という印象で、外務省には同世代でこんな人がいるのだな、と感心した覚えがあります。


一昨日の月曜日に、雨の外務省を訪れ、記帳をしてまいりましたが、いまさらながらテロへの怒り、ご家族のお気持ちを察すると、たまらないものがあります。

それはあの幼いお子さんや身重のご夫人を残された井ノ上書記官にしても全く同じです。

今回、はじめてこの戦争による日本人の直接の犠牲者が出てしまったわけですが、私たちは、この戦争がイラクや米国をはじめ多くの無辜の人々の犠牲を出している現実を直視しなければなりません。

以前から申し上げているとおり、私にはこの戦争に大義があるとは思えません。

したがって政府のあいまいな自衛隊派遣方針には当然反対です。

しかし、その上で、あえてひとつ申し上げたいことがあります。

題材に本日の新聞論文をご紹介したいと思います。産経新聞朝刊に「正論」という主張欄があります。

主張の内容の賛否を超えて、編集方針なのでしょうか、論旨明快な論文が多く、新幹線で移動する際には必ず目を通すことにしています。

その欄で今朝は、岡崎久彦氏(元駐タイ大使)が「危険と言ったら内閣は潰れるのか」と題して寄稿されておられます。

お読みいただくのが一番ですが、自分なりにその内容をご紹介します。


岡崎大使がタイ国駐在大使の頃に、国連決議で、各国がタイ北部の麻薬栽培地域で麻薬撲滅協力を行うことになり、日本は、警察力などでの協力ができないので、代替作物栽培の技術支援のための専門家派遣を行うことになった。

そこで、タイ王母殿下が設立された農園に日本人技術者を派遣する計画が持ち上がった。タイの警察が警備する最も安全と思われる農園である。

ところが、東京(日本政府・外務省)から派遣日本人職員の生命の安全を保障するという一札をタイ政府から取れという訓令(外務本省から大使への命令のことです)が来た。

これ以上安全な場所はなく、しかも欧米の専門家は危険な地域にどんどん入って献身的な作業をしている。

日本人だけが公式の生命の保証を要求するという恥ずかしいことができるだろうか?

しかし、優秀な部下は、この訓令を岡崎大使に直接伝えると、「大使はすぐに外務本省を怒鳴って、事態解決に役立たない」と判断。

そこで彼は、何度もタイ政府側から事情を聞き、東京にも説明するなど、東京とタイ政府を「往復」し、「手数」をかけ、安全性の実質を離れて、東京を説得した上で、初めて岡崎大使に報告したという。

その後、一時帰国された岡崎大使が折りしもPKO法案審議中の宮沢総理にこのことを報告されると、総理は「私がここ(国会)でやっているのも同じことだよ。派遣日本人の生命に少しでも危険があると言おうものなら国会は止まってしまうよ」

とおっしゃったとのこと。

日本の社会で問題解決するためには互いの意向を忖度(そんたく)しながら「なあなあ」でやるしかないのかもしれないが、こんなことだから憲法、防衛、消費税引き上げなどの問題についての日本の動きは、外国人の目から見て、氷河の動き(氷河のようにわずかずつしか動かない)にしか映らない。

日本も指導的立場にある人達は「なあなあ」でなく、政治的不遇にあうことをおそれず、自らの信念で発言してほしい。
 
そこで一旦物議をかもし出しても、チェックアンドバランスが働き進歩の原動力となる。

今回の二人の尊い犠牲が、日本の進歩につながることを期待する。

というものでした。

岡崎大使は、日本政府の米国のイラク攻撃支持を評価されていましたので、私と大使とは今回のイラク戦争観は異なりますが、それでも岡崎大使のご指摘には真理があると考えます。

いうまでもなく国家の任務の第一は、国民の生命・財産を守ることです。

例えば、
「現実の国際政治・安全保障環境のもとで、日本は自国民の平和と安全を守るためには、米国と一心同体で動かざるを得ず、米国の大義は日本の大義であり、そうである以上、日本は基本的に米国との同盟関係堅持で今回のイラク戦争は支持するしか選択肢はなかった」

と言う主張は、私の見解とは異なりますが、ひとつの主張であることは認めます。

われわれが政権を握れば、そもそものこの戦争の意義と日本政府の姿勢を見直さなければならないので別ですが、

小泉内閣が、上記の論理で米国支援の姿勢を明確にしたとすれば、個別の危険を覚悟し、イラクに自衛隊派遣することが全体の利益になるという説明を、堂々と国民にしたうえで従来方針を貫くべきなのではないでしょうか。

今の政府のスタンスは、岡崎大使がおっしゃるところの「なあなあ」を地で行くようなものではないでしょうか。

この点は、所詮米英のイラク攻撃を支持して動いている政府と、それを支持しない私の考えが違うので、政府に対して国民に説明した上で自衛隊を派遣せよと注文をつける立場にはありませんから、この程度にいたします。

むしろ私の立場でも今すぐに取り組むべきと考える事項は在外公館の警備の問題です。

現在の日本政府の対応では、結局のところ、身体を張って現地で頑張っておられた
奥参事官や、民間のNPO関係者のような文民に日本政府の対応についての、しわ寄せが及んでいます。

これは、現在の政府のみの責任ではありませんがイラクのような危険地域でも在留邦人保護の拠点である公館警備が民間依存というのは、全く話になりません。

逢沢一郎外務副大臣の自衛隊による公館警護の趣旨は理解できますし、例えば、現行の制度でも認められている、危険地域では、防衛駐在官なり、警備官を機動的に増員することができるように制度を改変することは、不可能でしょうか。

紛争地域・危険地域であればこそ実は何よりも平和的・外交的努力が必要です。

そして、その外交的努力を支えるためには最低限の警護能力が必要であることはいうまでもありません。

例えば、危険だからといって、今、イラクから日本だけ、大使以下外交官が引き上げるわけには行かないのです。

しかし、現地で歯を食いしばっている奥参事官のような方の警護は、「平和国家」としてできない、現場の外交官が持ち前の胆力・ガッツでリスクを犯して頑張っているのに国家はそれを守ることもできない。

そんな政府で、国民の安全を守れるのでしょうか。

無論、自衛隊をご都合よく活用するという考え方にも問題はありますし、石破防衛庁長官のおっしゃるような公館警備は、各国の治安当局が行うという相互主義の問題も、平時であれば理解できます。

でも、現在のイラクは平時ではないのです。

小泉首相や福田長官は、慎重論の理由を明らかにすべきです。


皆様の目には、今の日本は、
  • 「復興支援」、「平和貢献」の名の下に、「危険」の存在を覆い隠して行動する。


  • しかし行動に当たっては、他国がリスクを犯していても、わが国としてはあくまで安全であることを 確認してからのみ行動を行う。


  • 現地で実際の危険に直面して行動する人物を守ることには「慎重」である。
 という状況にあるようには見えませんか?

政治家として、誠に残念な、情けない状況だと思います。

小泉政権だけの責任ではありません。

岡崎大使が、本日の論文で看破されたように、戦後日本人の思考回路の問題かもしれません。

「この国のかたち」を変えなければならないという思いは、この「戦後日本人の思考回路」の変革なのです。

それは、外交問題にとどまらず私がいつも申し上げている内政の問題にもそのままあてはまります。

奥参事官と井ノ上書記官の尊い「犠牲」を、私たちの責任で、「進歩」に変えなければなりません。

最後になりましたが、お二人の勇気と、日本国と国際平和と復興への、ご貢献に対して、衷心より感謝と哀悼の気持ちを、捧げたいと存じます。

皆様のご意見をお待ちしています。

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■お知らせ■

◆松井孝治政策対話シリーズ 第7回◆

   「100分の1から日本を変える」

   講師:溝畑 宏 氏
      大分県企画文化部長
      大分トリニータ・ゼネラルマネージャー
   日時:12月7日(日)
      午後1時〜3時 (開場12:30〜)
   場所:リーガロイヤルホテル京都 2階「松の間」
   会費:1,000円(学生500円)

   申込は、松井孝治事務所まで
     E-mail info@matsui21.com TEL 075-213-6648

◆溝畑宏君は、私の洛星中学・高校の同級生ですが、
  自らの意思で、18年の官僚生活のうち12年超を
  大分県庁で過ごしている異色の官僚です。

  平松知事に見込まれて、その懐刀として
  ワールドカップサッカー大分県招致、
  大分トリニータのJ1昇格、
  立命館アジア太平洋大学の大分県誘致などの
  立役者として活躍したことが有名です。

  何よりも頭でっかちの議論を嫌い
  現場の経験と感覚を重視するバイタリティあふれる
  アイディアマンです。

  当日は、溝畑君に大分県政への思い、
  中央官僚のあり方、出身地京都への思いなどを
  熱く語ってもらおうと思っております。

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◆アカデミーヒルズ ポリシースクール◆

   「統治構造研究会〜国のかたち再考〜」

   ナビゲーター 松井孝治

   期間:2004年1月24日(初回)から毎月1回全8回シリーズ
   開催:土曜日・11時〜13時
   会場:六本木アカデミーヒルズ
      (六本木ヒルズ森タワー49階)
   参加費用:40,000円
        (全8回/税込み・各回ごとに分割可)

   プログラム:
    (1)この国のかたち(わが国の現状)/松井孝治
    (2)〜(4)意思決定のメカニズム/現状と課題
    (5)〜(7)改革の方向性 〜マニフェストを吟味する〜/「競争力ある政策」とは
    (8)まとめ「国のかたちを変えるために

  募集要項:
     定員:30名
     期間:2004年1月24日(初回)から毎月1回全8回シリーズ
     開催:土曜日・11時〜13時
     会場:六本木アカデミーヒルズ
        (六本木ヒルズ森タワー49階)
     参加費用:40,000円
        (全8回/税込み・各回ごとに分割可)

   お申込・お支払い方法
     (1)FAXにて申込・参加費用を振り込む
     (2)アカデミーヒルズのホームページ 
        http://www.acoademyhills.com にて
       必要事項入力後、受講料お支払い手続きを。

   お申込締切日:2004年1月16日(金)
     定員になり次第締め切り 
     入金後のキャンセルはお受けできません

   お問い合わせ
     アカデミーヒルズ総合事務局まで
     (松井孝治ポリシーセミナー担当まで)
     電話番号03−6406−6649
      受付時間10:00〜19:00(土日祝日除く)

   詳しくは、松井孝治事務所まで
     E-mail info@matsui21.com TEL 075-213-6648

<第87号:2003.12.03発行>

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