第142号  2006.9.13


  皆さん、こんにちは。
  松井孝治です。

  本日はふたつのお話を申し上げます。

◆◆ひとつ目は、
  福岡の酒酔い運転三児死亡事故の問題です。

  昨日の読売新聞にもありましたように、
  この事件を含め、
  交通違反の取り締まり強化にもかかわらず、
  後を絶たない悪質な酒酔い運転を
  今後どのように規制強化するかは
  きわめて重要な問題であると思います。

  ただ、本日は、別の角度から
  この問題を取り上げてみたいと思います。

 ◆それは ガードレール(防護柵)の強度の問題です。
  すでに報道されているように、
  被害を受けられたご家族の車は、
  追突されガードレールを 突き破る形で橋の上から転落し、
  ご両親の必死の救命努力にもかかわらず
  三つの幼い命が亡くなってしまいました。

  反対車線のガードレールは、
  車道に面しているため 十分な強度が確保されていたけれど、
  事故のあった側は、
  歩行者・自転車用通路をはさんでいたため、
  歩道用のガードレールの強度しか確保されておらず、

  このことが、悲惨な転落事故を招いた
  ひとつの 副要因になっていたということです。
  (東京湾にかかるレインボーブリッジなどには、
   歩行者用の通路と 車道の間に 強固な防護柵がありますが、
   福岡の場合 そのようなものもなかったようです。)

  報道に接する限り、福岡市はガードレールの強度については、
  国の基準に則したもので 福岡市には問題はなかった
  といっているようですが、
  この点は 十分に検証する必要があります。

 ◆道路法上の道路については、
  どのような道路に ガードレール(防護柵)を設置すべきか、
  その強度については どのようなものであるべきか、
  国土交通省道路局が 全国的な安全基準、
  「防護柵の設置基準」(道路局長通達)を作ってはいます。

  しかし、これはあくまで一般的な基準であり、
  そもそも、道路のどの部分に、
  どのような強度のガードレール(防護柵)を設置すべきかは、

  当該道路の見通し(視界やカーブの度合いなど)や
  交通量、制限速度や設計速度など、
  個別の道路事情に則して、
  道路管理者である福岡市が 判断すべきものであります。

  さもなくば、
  日本中のあらゆる道路のガードレール設置の基準を
  国土交通省が判断すべき ということになってしまいます。

  (新聞報道が正しいとして、福岡市の主張に基づきますと、
   何のために道路設置者・道路管理者として
   福岡市が存在するのか わからなくなります)。

 ◆また、事故が起こった道路の場合、
  法律上は 道路法上の道路でもありませんし、

  道路局の基準が 当然に適用されるわけではありません。

 ◆要は、道路設置者であり かつ管理者である福岡市が
  自らの責任で 判断しなければならない問題であるわけです。

  福岡市が、ガードレール(防護柵)の設置基準は
  国土交通省が決定したものに従ったので、
  福岡市に責任はない と主張しているのであれば
  (報道上はそのように理解されます)、

  責任転嫁か、さもなければ、
  安全基準は「中央のお上」が決めるもの、
  自分達は それに従えばよいという
  一時代前の意識の産物かのいずれかです。

 ◆私が これまでずっと申し上げている、
  地域に当事者意識に欠けた、
  過度の中央集権・中央依存の悪弊が、
  この事故の背景にも 存在していたように感じます。

 ◆いずれにせよ、このようなことで
  責任の押し付け合いをしていても、
  亡くなった貴重な生命は 戻ってまいりませんし、
  ご遺族にも大変失礼な話です。

  二度とこのような惨事を繰り返さないためにも、
  道路の安全基準のあり方、その責任分担を
  明確にしなければならない のではないでしょうか。

 ◆ただしこの問題は、
  実際の臨港道路の見通しが どのようなもので、
  また車道と歩道の段差、歩道の幅、
  実際の交通量や 通行車両の種類など 
  現場の状況の精査をした上で、
  本当にどのような安全確保策
  (具体的にいえば ガードレールの強度など)
  が必要であったかを 判断する必要があります。

  無責任な批判合戦のみでは 
  今後の 同様の事故の再発防止を考えるための
  建設的な議論にはならない ことを申し添えておきます。


◆◆ふたつ目は、
  先週訪ねました フィンランドの学校見学の
  お話をさせていただきます。

  (この見学は、民主党シンクタンク・プラトン
   (公共政策プラットフォーム)の教育プロジェクト
   の一環で行われたものですが、
   私を含めた参加議員は 私費で参加いたしました)。

 ◆9月4,5,6日の三日間、
  ヘルシンキ及びその郊外の 
  三つの学校を 見学させていただきました。

  初日は ヘルシンキ郊外のケラバ市立のアハヨ小学校。
  この学校は ヘルシンキ周辺の最も標準的な小学校
  ということで訪ねました。

  二日目は ヘルシンキ市内のフィンランド・ロシア学校。
  ここは 国立のフィンランド語・ロシア語のバイリンガル校で、
  終学前(幼稚園)から高校までの一貫校。

  三日目は ヘルシンキ大学教育学部付属学校
  (ここも 高校までの一貫校。
   今回は フィンランドの国語教育の第一人者であり
   数多くの教科書・教材の執筆者でもある 
   メルビ先生の授業に 張り付かせていただきました)です。

  いずれも 一日の始業から終業までの時間を
  参観させていただくとともに、
  先生方と意見交換をいたしました。

 ◆そもそもの目的は、
  OECDのPISAで二回連続高位(読解力はいずれも一位)
  の評価を得て、世界一とも言われるフィンランドの教育、

  しかも 塾や受験戦争などが ほとんど存在しない中で
  そのことを実現しているフィンランドメソッドを、
  この目で見、体験して、
  今後の 日本の教育改革の参考にしたい 
  と思ったことが第一です。

  同時に、わが国のフィンランドメソッド研究
  の第一人者である北川達夫さんに
  プラトンの教育プロジェクトで お話を聞かせていただき、
  非常に興味深い内容であったこと、

  さらに申し上げれば、
  私の居住学区である京都市立御所南小学校が、
  フィンランドメソッドの採用に積極的で、
  昨年視察に行かれた 村上校長先生からも
  極めて示唆に富む といわれていたこともあって、

  短期間のとんぼ返り(4泊6日)でしたが、
  ヘルシンキを訪ねてまいりました。

 ◆学校の選定や事前調整、通訳など、
  すべてにわたって北川達夫さんの
  全面的なご協力をいただきました。

 ◆詳細な内容は、
  あらためてプラトンで報告書をとりまとめましたら
  ご紹介いたしますが、
  本日ここでは 簡単な感想を ご報告申し上げたいと思います。

 ◆フィンランドと日本の教育の最大のポイントは
  「学力」という概念についての
  フィンランドと日本の相違だと思います。

  もっと正確に申し上げれば フィンランドには
  一般的に「学力」という言葉がないようです。

  フィンランド語には
  「パテビュース」という言葉はありますが、
  これは日本語に訳すと
  「能力適性がある」という意味に近いようです。

  すなわち 日本のように「学力」をひとつの物差し、
  例えば 偏差値で測るのではなく、

  大学教授に求められる「パテビュース(学力)」、
  お医者さんに求められる「パテビュース(学力)」、
  木工職人(こちらでは専門職として給料も高いそうです)
  の「パテビュース(学力)」

  は、それぞれまちまちであり、
  各生徒が 自分の適性を見抜き、
  それを高めていくことを、社会としても学校としても、
  重視しているようです。

 ◆意見交換の中で、不登校や落ちこぼれの話をしていても、
  どうも話がかみ合いません。

  標準的な速度・学習内容についていけない子供には、
  別メニューの支援教育が用意されていますし
  (全く特別なことではなく、私達が参観した小学生の授業でも、
   科目ごとに空席があり、理由を尋ねると、
   彼らは 別メニューの支援教育を受けているとのことで、
   また別の科目では 戻ってきているようでした)、

  逆に 習得の早い子ども達は 
  同じ教室で 追加の別教材を使った学習を 行っていました。

 ◆要は 子ども達の多様性や習熟度を尊重しながら
  個人個人の能力適性を 最大限に引き出すことに
  主眼を置いている教育 と見受けました。

  行きたくもない高校に入り、ろくろく勉強もしない、
  学校にも行かないというような状況は、
  自分の能力適性を高める時間を みすみす逃しているもので、

  フィンランドの方々には、
  なぜ そんな無駄なことをするのか 理解に苦しむようですし、
  彼の地では そのような事例は極めて少ないということです。

 ◆国民性や社会環境が異なりますので
  一概には申し上げられませんけれども、
  画一的な物差しではなく、個人の能力適性を重視し、
  その個性を伸ばす というフィンランド流のやり方が、
  全体としての到達度を上げている、
  そのことが 国としての競争力につながっている という話は、
  とても興味深いものでした。

 ◆もうひとつの 日本とフィンランドの大きな違いは、
  現場への分権が進んでいる ということです。

  教育省の顧問ともお話したのですが、
  フィンランドの教育改革は 70年代から本格化しており、
  成果が上がっているのですが、
  その最大の要因は 現場への分権にある ということでした。

  教育省自体は 職員数300名程度の小さな役所で、
  学習指導大綱のようなものを定め、
  地域への財政配分基準を決定している以外は、
  自治体、学校の裁量を 大幅に認めているとのことでした。

  現に ヘルシンキ市内・近郊の三つの学校を訪問しましたが、
  その規模、学校の施設の大きさや構造、
  授業の方法など さまざまでした。

  ある学校では 
  競争の存在自体を否定的 にとらえていましたが、
  別の学校では 
  競争のない教育などありえない という答えでした。

  共通点は、
  国全体がそうですが、教育が、
  ノートや鉛筆に至るまで 完全に無償であること、
  先生方が 相当程度に 子どもたちの多様性を許容し、
  日本のように単一の物差しで
  子ども達を計るような風潮が 皆無であることでしょう。

 ◆さらに、面白かったのは、
  先生方や学校の評価にあたり、
  保護者や子ども達に 32項目の学校評価・教師評価の
  アンケートを 2,3年ごとに実施しているということでした。

  アンケートは 自治体が外部の会社に委託して行われ、
  その結果は 学校や教育委員会に
  フィードバックされるとともに 全保護者に送られ、
  希望すれば 他校の評価も見られるとのことでした。

  子ども達は 
  必ずしも単一の物差しでは 比較・競争にさらされませんが、
  学校や教師は 共通の物差しで評価されている
  というのも興味深いものです。

 ◆今回、教育関係者とは別に、
  日本にも留学経験のあるヘルシンキ大学の青年が
  たまたま レストランでウェイターのアルバイトをしており、
  少し意見交換をする機会がありました。

  そこでも 
  日本流の「学力」という概念が フィンランドにはないこと、

  また、教育関係者ではなく
  一般的なフィンランド人のフィンランド教育観を伺うに、
  フィンランドの教育が 世界一かどうかはともかくとして、
  少なくともフィンランドの教師は、
  教えることが大好きで、熱心な人がそろっている
  ことは事実だ という話でした。

  これも 教師という職業に 見合った人材の能力適性を見出し、
  それを磨くという、社会の要請、国民の志向の
  結果のような気がします。

 ◆フィンランド人に、
  フィンランドという国は何で食べているのか
  と聞くと「木と頭」という答えが返ってまいります。

  「木」というのは森林の国、林業の国、
  フィンランドらしい答えですが、

  「頭」というのは、人口わずか520万人、
  木材以外に さしたる天然資源があるわけでもない
  フィンランドは、
  人材 という資源こそを大切にすべきだ 
  という意味なのでしょう。

 ◆日本よりわずかに狭い国土
  (その大部分は 森林と湖に覆われた土地)と
  日本の二十分の一以下の
  人口の「小国」フィンランドですが、

  世界経済フォーラムの競争力ランキングでは 
  三年連続世界一、
  ノキアやリナックスを生んだ
  フィンランドの教育や 国づくりには、
  日本が学ぶべき点が 多々あると思います。

 ◆本日も長くなりました。

  フィンランドの教育や社会について語る際、
  本来はフィンランドが採用している徴兵制についても
  語らなければならない と思います。

  機会があれば またこの続きは
  また 別の回で申し上げたいと思います。

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 ●お知らせ●

  民主党京都府連「躍進のつどい」のご案内

  例年、京都府連主催で開催させて頂いておりますが
  本年も来月に迫ってまいりました。

  今回は通例にもまして 高額な会費で恐縮ですが、
  来年の 参議院選挙・統一地方自治体選挙を視野に入れた集いで、
  私どもとしても、一人でも多くの皆さまに
  ご参加いただきたい催しでございます
  (今後は 当面このような会費での会合は予定しておりません)。

  ご協力頂ける場合、
  下記 松井事務所までご連絡のほど お願いいたします。
  厳しい経済状況の折、本当に申し訳ありませんが、
  何卒よろしくお願いいたします。

  日時  10月20日(金)
        講演17時45分 懇親会18時45分
  会場  リーガロイヤルホテル京都 2F
  参加費 20000円

   詳細・お申込は…
     京都事務所
     電話 075-213-6648 FAX 075-213-6645
     e-mail info@matsui21.com

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  ●京都から、この国のかたちを変える。●
   第142号  2006.9.13 発行  (配信数:1710部)

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<第142号  2006.9.13発行>

     
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