 |
|
第144号 2006.10.17
皆さん、こんにちは。
松井孝治です。
本日も長文になってしまいました。
お時間のおありの際にお読みください。
★ 北朝鮮への対応は、極力一致結束して
あらためて申すまでもなく、北朝鮮が
度重なる国際社会からの警告を無視するにとどまらず、
むしろそれに反抗するような形で
核実験を強行したことは 極めて問題です。
拉致問題も抱えるわが国としては、
国連や米国、中国、韓国、ロシアなどとも協調して
断固たる態度で
これにのぞまなければならないことは当然です。
国連代表部などのこれまでの外交努力は
評価出来るものです。
私は、対北朝鮮外交においては、
日本が出来るだけひとつになって
対応していかなければならない と考えております。
その意味でも、
ここは 与野党双方が国内で非難合戦を繰り広げるのではなく、
丁寧に調整しながら、互いに自制すべき点は自制し、
一致結束してことに当たるべき局面と考えています。
★ 中川発言の真意を疑う
その意味で、日曜日に自民党の中川政調会長が、
核保有の議論があってよい、
核も選択肢の一つだと発言したことは、
大きな問題を含むと思います。
ひょっとしたら
北朝鮮の牽制の観点からの発言なのかもしれませんし、
戦後わが国がまともに議論してこなかった問題について
の問題提起だったのかもしれません。
牽制であるとすれば、
折角、国連など国際舞台では中国や韓国なども含めて、
北朝鮮包囲網を作り、
制裁決議を全回一致で採択できたにもかかわらず、
こうした牽制は アジア諸国のみならず米国まで含めて
日本に対する警戒心を高めるばかりで
逆効果であると思います。
現に米国のブッシュ大統領もFOXテレビのインタビューに答え、
「日本から出てきた、核兵器に関する立場を
再検討中との発言も、中国が懸念していることを知っている」
と発言しているほか、
スノー大統領報道官も記者会見で
「日本の核武装を止めるために何をしているのか」と問われ、
「この地域は非核のままでいてほしいと」と述べています。
また、仮にこの発言が、単なる牽制ではなく、
わが国の安全保障政策のひとつの提言だとすると、
安倍総理の国会発言とは全く矛盾する発言であり、
ご自身もすぐに撤回されており、
なんのための発言だったのか理解不能です。
中川さんといえば安倍総理の盟友の一人であり、
自民党の政策責任者です。
対北朝鮮対策で、わが国がひとつになって対応すべき、
またアジア諸国とも結束して対応すべきこの時期に
あえて核武装論を提起した中川政調会長の
政治センスそのものを疑わざるを得ません。
また、一言発言してすぐ撤回ということであれば、
ここまでの国会論戦で隠してきた「鷹」の「爪」を
一瞬出して、世間が騒いだので、すぐまた引っ込めた
というのが本当のところかもしれません。
★「純情きらり」のワンシーン
少し話題を変えたいと思います。
9月末に終わりましたけれども、私は、この半年間、
NHKの朝の連続テレビ小説「純情きらり」を
朝7時半からのBSで見るか、見ることができない日には
録画で拝見しておりました。
戦争というものを一人の女性の一生を通して描いた、
なかなかの力作であったと思っています。
その中で印象深いシーンがありました。
主人公の「達彦」と「桜子」が、
達彦の同僚を戦地で見殺しにしてしまったことを、
戦後、その同僚の姉にお詫びに行くシーンです。
弟さんを助けることが出来なかったことを許してくれ
という達彦に、その美しい姉が穏やかに投げかけた言葉は、
「許しません」、
「あなた方のことも、そして、この戦争を止めることが
出来なかった私達自身も、絶対に許しません」
というものでした。
わずか数分のシーンでしたが、戦争の責任について、
さまざまのことを考えさせる やり取りであったと思います。
(昨年公開された「ヒトラー 最期の12日間」のエンディングで、
実写の晩年のユンゲ秘書が、ヒトラーを止めることが
出来なかったドイツ人の責任について発言しているシーンと、
私の中では重なるものでした。)
★一億総懺悔vsA級戦犯
戦後最初の総理である東久邇稔彦首相は、
首相としての最初のラジオ放送で「一億総懺悔」を説きました。
(注)
1945年9月5日の施政方針演説の中の一節
敗戦の因って来る所は固より一にして止まりませぬ、
前線も銃後も、軍も官も民も総て、国民悉く静かに
反省する所がなければなりませぬ、我々は今こそ総懺悔し、
神の御前に一切の邪心を洗い浄め、
過去を以て将来の誡めとなし、心を新たにして、
戦いの日にも増したる挙国一家、
相援け相携えて各〃其の本分に最善を竭し、
来るべき苦難の途を踏み越えて、
帝国将来の進運を開くべきであります
国の指導者である総理の発言として
不適切だという批判や反発もあり
(重光外相は 政治指導者の責任こそを追及すべき
との立場で辞任)、
そのことも一因となって東久邇内閣は
わずか54日間で総辞職にいたるわけです。
私は、当時の重光外相と同じく、東久邇首相のこの発言は、
敗戦直後の一国の総理の発言としては、
責任を問われるべきものと思っておりますが、
一人の国民としては、一面の真実が含まれていること
は事実だと思います。
A級戦犯の戦争責任は東京裁判で確定し、
日本政府はそれを受け入れ、独立国としての立場を回復した。
それは歴史的事実です。
「地位あるものの結果責任」
(ノブレス・オブリージという言葉になるのでしょうか)
から見れば いたしかたなかったということかもしれません。
しかし、同時に、この戦争を一部の戦争指導者の責任だけ
にしてよいものであったのかどうか、
その疑念を見事に台詞にしたのが、
上に述べた「純情きらり」の
一シーンで合ったような気がします。
確かに、多くの国民は、のぞむとのぞまざるとにかかわらず、
戦地に召集をかけられ、お国のためにということで
その命を散らせました。
さらに おびただしい数の一般市民たる日本国民が
犠牲になったのが、あの戦争でありました。
それらの犠牲者個々人に罪はありませんし、
戦争の犠牲者であることは当然です。
しかし同時に、あの戦争が
諸外国の罪のない膨大な数の方々を犠牲にしてしまったこと、
そしてそのような国策の誤りを、当時の日本人が、
とめられなかったこともまた歴史的な事実なのです。
そのことを「純情きらり」や
「ヒトラー 最期の12日間」のエンディングは
訴えていると思います。
★戦争責任を総括しなかった戦後日本に 問題の本質が存在
この問題に関連して考えるべきは、
「A級戦犯」をはじめとした
戦前の政治指導者の政治責任であります。
1972年の日中国交正常化交渉に当たって、
中国政府が戦争賠償請求権を放棄した際、
日本の戦争責任は軍部など国家指導者の責任であり、
日本国民は中国人民と同様、
被害者であったという整理を行って問題を解決したというのは、
私なども大学で現代史の基本として学んだ問題です。
10月はじめの予算委員会質疑の中で、安倍総理は、
中国政府が、日本の戦争指導者と一般国民を
区別する論理をとった経緯について、
日本側がその論理に同意したわけではない
という認識を示されました。
野党や与党の一部も この歴史認識に反発を表明しています。
安倍総理は、政治家が、歴史を語るには
慎重であらねばならないとして多くを語っておられませんので、
その歴史認識は つまびらかではありません。
しかし、私は、以前から、この問題は、
戦後日本の戦争総括に対する「逃げ」が招いてきた問題
であると考えています。
私もあの戦争の責任が、
東京裁判で裁かれた一部の戦争指導者だけにあって、
それ以外の日本人は、中国やアジアの人々と同じように
全く責任がないとは思いません。
そもそもA級戦犯、B・C級戦犯、あるいは戦犯
という類型で戦争責任をとらえられるのが適切なのか。
それは誰が作った尺度での判断なのかと問えば、
答えは明らかで、当時の占領国であった
米国の圧倒的な影響下において 判断がなされたわけです。
個人的には、東京裁判が
当時の国際法に照らして適切であったかどうかについても
大きな疑義を感じています。
パール判事の無罪論に 正当性がありながらも、
残念ながら戦勝国の論理で裁かれた裁判であった
のだと思っています。
しかし、さらに残念なことに、占領下の日本は、
東京裁判に代わって
自らの歴史観に基づいた戦争総括を行うことはできず、
したがって独自の戦争責任判断を行い得ないままに、
東京裁判が行われ、
サンフランシスコ条約に基づき東京裁判を
日本国政府として受け入れざるを得なかった、
言ってみれば 東京裁判の受け入れと引き換えに
独立国の立場を得たというのが、現実の国際政治であり、
歴史的な事実であります。
問題は、その後も独立を回復した日本政府が、
自らの判断で戦争責任の再総括を
行ってこなかったことだと思います。
★ 靖国問題も全く同根
この点を総括しないで、
日本が今日ここまで来てしまったことが、
靖国論争をはじめとした問題を
日本がここまで引きずっている原因なのです。
したがって、東京裁判で有罪判決を受けた人々を、
ある日本人は戦争犯罪人とみなし、
ある日本人は功労者とみなす、
国家としての評価は存在しないという事態になるわけです。
安倍総理が、「A級戦犯は戦争犯罪人か」
と問われて答えに窮するのは、
安倍総理の問題というよりも、
いわばこうした日本の歴史の必然だと思うのです。
本来国家として慰霊すべき戦争犠牲者の方々の判断も、
法律的には一宗教法人である神社にお任せしている結果、
そちらに参拝する、しないが、
国家指導者の歴史観の受動的な踏み絵のような事態を
作り出していることと、
全く同一の問題と言っても良いと思います。
★中国政府の戦争指導者・日本国民区別論は誤りか?
では、私が、安倍さんと同様に、
中国政府の戦争指導者・日本国民区別論を否定するか
と申せば、必ずしもそう簡単ではありません。
なぜなら、これは中国政府が発明した論理でなく、
東京裁判受け入れの段階で、日本政府も認めた戦争責任論を、
中国政府が、外交上の理屈付け(レトリック)
として援用したものであるからです。
1972年の日中国交回復時に、
毛沢東主席や周恩来首相を筆頭に、
中国政府が、日本国民が中国人民と同様に
戦争被害者であると本音で思っていたと考えることは、
お人よしに過ぎると思います。
後に公開された外交文書では、
親日的と思われていた周恩来首相自身が、
米国のキッシンジャー補佐官と交わしたやり取りの中で
明らかに対日不信感を表明しています。
ちょうどニュルンベルグ裁判でナチスドイツと
ドイツ国民の責任を切り離したのと同様に、
A級戦犯と一般国民を切り離す東京裁判史観を借りて、
中国国内の反発を抑え、より大局的かつ建設的な、
両国の友好関係を得るための外交上の「知恵出し」
であったと解釈するのが妥当です。
この論理をもって中国を批判するのは筋違いであり、
東京裁判史観を受け入れ、
その後もそれに代わる戦争総括を行えなかった
日本国政府の問題が本質であると思われます。
また、同時に、
日中両国政府の戦犯・一般国民分離の戦争責任について
の理解は、外交上の文書に残すような性格のものではなく、
外交合意の共通のバックグラウンドであるわけです。
それらが外交文書に残っていないからと言って
そうした共通理解を否定する論理は、
交渉当事者の対話と共通理解の積み上げである外交成果を、
最終合意文書のみで判断する、
いかにも表面的な議論であることも申し添えたいと思います。
もうひとつ申し上げなければならない点があります。
先ほど来申し上げているとおり、
戦争責任を一部の指導者(それが誰なのかはまた別問題です)
のみの責任にするのではなく、
全国民がそれぞれに反省しなければならないという意見は、
過去から主張されてきたものであり、
一理ある議論ではあります。
仮に、一人の個人が、戦争責任は
一部の指導者、典型的にはA級戦犯のみにあるのではなく、
当時のもっと幅広い国民や一般民衆が責任を連帯しているもの
であるという議論をしたとして、
私は何の不思議もないどころか、
個人的には、先に述べたとおりむしろ同感なのです。
しかし、それを、
戦争の被害を受けた側の国民がおっしゃることはともかく、
指導者の立場の人間がその論理を使い始めると、
政治指導者の国家的責任というものがあいまいにされ、
結局誰も責任を問われない、
丸山真男氏の言葉をお借りすれば「無責任の体系」
になってしまうという問題があります。
安倍総理は、日本国政府を代表する最高指導者です。
かくいう私にしても
参議院議員として選出していただいている政治家です。
そうした政治家が、東京裁判史観に立つかどうかは別として、
すなわち、いわゆるA級戦犯の方々に責任があるのか、
別の方々に責任があるのかはともかくとして、
当時の政治指導者の戦争責任をあいまいにして、
かつての東久邇首相のように一億総懺悔を叫ぶということは、
やはり、無責任のそしりを免れないのではないか と思うわけです。
ついつい長くなってしまいましたことをお詫びします。
それだけ戦争責任という問題は
一筋縄では捉えられないということかもしれません。
この文章を最後まで読んでいただいた読者の方々に、
特に感謝を申し上げたいと存じます。
◆◆ お知らせ ◆◆
10月度 国政報告会
すでに一部の皆さまには
ご案内をいたしておりますように
10月21日土曜日に 定例の国政報告会を開催します。
名称 松井孝治と座談会
日時 10月21日(土) 15時から
会場 京都商工会議所ビル 2F第4教室
※地下鉄烏丸線「丸太町」駅6番出口直結
で行わせていただきます。
なお今回は通常通り報告会終了後会費制で懇親会を行います。
ご参加の方は事前にお申し出頂ければ幸いです。
皆様のご参加をお待ちしております。
詳細・お申込は…京都事務所
電話 075-213-6648 FAX 075-213-6645
e-mail info@matsui21.com
==========================================================
●京都から、この国のかたちを変える。●
第144号 2006.10.17 発行 (配信数:1720部)
●松井こうじ後援会事務所
〒604-8141 京都市中京区蛸薬師通高倉西入
泉正寺町334 日昇ビル5階
TEL:075-213-6648 FAX:075-213-6645
【松井こうじオンライン】 http://www.matsui21.com
[ご意見、ご感想は…] info@matsui21.com
●転載を歓迎します。皆様の周囲で是非お広めください。
その際、宜しければメールにてご連絡ください。
Copyright(C)2001 Koji Matsui All rights reserved
|
|
|
 |