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第145号 2006.10.20
「竈金(かまどきん)の精神、滅びず!」
皆さん、こんにちは。
松井孝治です。
このメールマガジン、あまり頻繁には発行しないことを
原則にしておりますが(笑)、(私が無精であることの言い訳?)、
とても、うれしい話がありましたので、本日は例外的に
短いインターバルで発行させていただきます。
★ドーナツ化のあおりでまちなかの小学校は統合へ
私の住まいから徒歩5分のところに、
元の京都市立龍池小学校があります。
今から13年ほど前から、元はといえば
ドーナツ化現象のあおりを受けて、京都市中心部の学校が
多数統合されました。
私の母校である京都市立日彰小学校は、私の在学中、
ですからかれこれ40年近く前には、すでに1学年1クラスの
小規模校となっておりましたが、この時期に統合され、
京都市立高倉小学校となりました。
龍池校も、同じ時期、他の4校と一緒になり、
京都市立御所南小学校が誕生いたしました。
★廃校をどうするのか
その際、跡地を活用して新設統合校が建設された小学校
(例えば日彰校や富有校)はよいのですが、
それ以外の小学校は、それぞれ、旧校舎や跡地を
どのように利用するのかが 問題になります。
各自治連合会をはじめとして地域の住民の方々と、京都市が、
旧校舎や跡地の活用の方法を協議しながら、
活用方法を考えていきます。
京都芸術センターになった元明倫小学校や、
子育て支援総合施設「こどもみらい館」になった
元竹間小学校などは、比較的早くに
後継施設が設立されていますが、
後継施設の設立に難航した(している)学校もあります。
現在の土地・施設所有者である京都市としての
施設整備計画と、地域住民の思いを調整しながら、
具体的な施設の内容を 決定していくことになるからなのです。
★町衆の心意気
こう申し上げると、「えっ?」
と思われる方もおいでだと思います。
廃棄物処理施設のような忌避施設を設置するならばともかく、
なぜ広義の文教施設を設置するのに、そんなに丁寧に
地元調整が必要なのか、京都市内以外の方々には
おわかりにくいかもしれません。
実は 京都市中心部の小学校の多くは、番組小学校と呼ばれ、
明治2年に、当時の地域住民が、竈金(かまどきん)、
すなわち、竈のある家は子ども達の教育のために
お金を出そう、あるいは竈の数に応じて
分担金を出し合った資金を元に設立した、
「地域立」小学校なのです。
蛤御門の変で京の都、洛中は
半分ほどが焼け落ちたといわれます。
しかし、京の町衆は、明治維新の際に再編された
「番組」という自治組織ごとに、政府に言われるまでもなく、
洛中に64校の小学校を自らの手で設立したわけです。
明治5年の学制発布をさかのぼること3年前です。
東京のような土地ではそれはそれ、
法律的には小学校は土地も校舎も、自治体のものなのだから、
勝手に跡地利用します、ということもあるのかもしれませんが、
京都の街中では そのようなことにはなりません。
法律的に京都市の財産であっても、元はといえば
町衆が拠出した学校です。地域の皆さん(町衆)の
番組小学校への愛着は消えてはいません。
もともと自分達が財産を出し合って設立した学校を、
あとは京都市さん、よろしく、とは参らないわけです。
どうやったら地域の子ども達や、町のためになるか
住民の皆さんの目は極めて真剣です。
京都市役所(京都市教育委員会中心ですが 他の部局も
かかわります)もそのあたりはよくわかっておられますから、
丁寧に、自治会をはじめとした地域住民の方々と話し合い、
合意を踏まえて、新しい施設の設立を進めておられます。
★「マンガ」、偏見との戦い
元龍池小学校も、当初、中央図書館にするという構想も
ありましたが、ある時期から、マンガを主たる内容にした
ミュージアムにしてはどうかという構想が生まれました。
「マンガ」に対する住民の方々の多様な印象もあって、
最初は抵抗もありました。マンガは不真面目で、
教育上好ましくない、そんな偏見もありました。
しかし、
「マンガ」が今や世界に誇る日本の文化の一つ
(日本のソフトパワーの象徴)になっており、その拠点を
是非とも京都に作りたい、そしてどうせ作るなら、
京都一、日本一、いや世界一の内容を誇るものにしたい
という関係者の意気込みが、
そうした偏見を徐々に氷解していきました。
何度となく侃侃諤諤の議論が、関係者の間で行われ、
また二度にわたって、河合隼雄文化庁長官や、大学関係者、
文化人、経済人、行政関係者などが集われて
マンガをテーマにしたシンポジウムを 元龍池小学校で
開催する中で、ついに、京都国際マンガミュージアムが
この秋オープンされることになったのです。
しかも元龍池小学校の施設をそのまま生かして、
より美しく改装する形で。
烏丸御池北西の元龍池校の、古びていた外壁が取り除かれ、
美しく化粧直しされた、マンガミュージアムが姿を現しつつ
あります。烏丸通りからその姿をご覧になり、驚きのため息を
つかれた方も多いのではないかと思います。
ご近所ということもあり、私もいろいろな経緯を
存じておりますが、この間の自治連合会の皆さんのご努力、
市長さんや教育長さんをはじめ京都市各部局の皆さんのご尽力、
京都精華大学のご英断とご苦労、文部科学省、
文化庁の皆さんのご支援、特に、今は病床に伏せておられる
河合隼雄先生のご理解、これらがなければこのプロジェクトは
ここにいたることはなかったと思います。
(なお、マンガミュージアムは京都精華大学・京都市の
共同事業で、施設の管理運営は京都精華大学が行われます。
施設整備には約12億円の資金がかかり、文部科学省が
約4億円程度、京都市が1億円余りの補助をされると
伺っております)
★現代に生きる竈金
このことだけでも十分うれしいのですが、
今日このメールマガジンを発行させていただくのは、
もうひとつうれしいことが重なったからです。
昨日、龍池自治連合会の谷岡会長さんからご連絡があり、
昨日、10月19日付けで、龍池自治連合会から、京都国際マンガ
ミュージアムの主体である、京都精華大学さんに1千万円の
寄付をなさったということなのです。
これは、マンガミュージアムのグラウンドに人工芝を
敷設するための資金に利用いただきたいとの趣旨だそうです。
といっても、別にこの地域に大富豪がいらして、
ポンと1千万円が出てきたわけではありません。
自治会で、毎年、毎年、お祭りや各種の行事を運営する資金を
少しずつ、少しずつ節約しては何十年にもわたって
積み立てしてこられた、貴重な、貴重な、虎の子の資金を、
1千万円、マンガミュージアムに寄付する、この発想こそ、
現代の竈金(かまどきん)にほかなりません。
★町衆精神ここにあり
京都の町家は、うなぎの寝床。間口は狭くても奥行きは深い。
それと同じく、さすがに伝統ある龍池学区。
懐の深さ、そしてその気風(きっぷ)のよさに、
うならされました。町衆精神ここにあり、です。
しかも、ミュージアム設立までに、地域の皆さんが、
厳しい反対論もある中で、苦労に苦労を重ねてこられた、
そのお話を伺っているだけに、自治連合会の皆さんが、
最終的に心をひとつにしていただいて、本当に貴重な、
町の財産をマンガミュージアムに投じていただいたことは、
涙が出るほど、素晴らしいお話だと思います。
あとは、京都精華大学さん、京都市などに、この地域の
心意気に応えていただいて、世界に誇るマンガミュージアムに
育てていっていただくことを 心から願うのみです。
東京一人勝ちの景気回復、地域間格差の広がりの中で、
京都の町衆の精神は滅びていない、そんなことを実感して、
とてもうれしく、メールマガジンを発行させていただきました。
(ご参考)
◎11月24日午前には烏丸御池の京都国際マンガミュージアム
にて開館記念式典があり、桝本頼兼京都市長、片桐充京都精華
大学理事長、谷岡英治龍池学区自治連合会会長、塩至文化庁
文化部長ほかがご出席されるそうです。式典終了後,施設見学
会も開催されるようです。
◎当日午後2時半には開館記念フォーラムも開催されるそうです。
高畑勲監督、竹宮惠子京都精華大学教授(マンガ家)、寺脇研
元文化庁文化部長,夏目房之介氏(マンガコラムニスト)、
茂山千三郎氏(大蔵流狂言師)といった豪華メンバーで、
パネルディスカッションが開催されるようです。
主催は京都精華大学さんとのことですので、
お問い合わせなどは まずは京都精華大学にお願いいたします。
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●京都から、この国のかたちを変える。●
第145号 2006.10.20 発行 (配信数:1720部)
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