第156号  2007.4.2

  <城山三郎氏を偲ぶ>

  皆さん、こんにちは。
  松井孝治です。

  今は統一自治体選挙真っ盛りで、
  私も連日分刻みのスケジュールで応援に回っております。

  ただ、今日は、朝、右京区で応援したあと、
  北部に応援に伺うため、その移動時間にこのメールを書いています。

  前回のメールマガジンで天下り規制の「新・人材バンク」
  のことについて批判的意見を書かせていただきました
  (同時に私の提言を書かせていただきました)。
  前回のメールマガジンはこちらでご覧ください。
  
 ★城山三郎氏逝く

  ちょうど前号を発行した当日の3月22日、
  城山三郎さんが亡くなられました。

  その代表作のひとつである「官僚たちの夏」を読んだことが
  直接のきっかけになり、私が通商産業省に奉職したことは、
  すでに何度かこのメールマガジンでもお伝えしたとおりです。

 ★「官僚たちの夏」に描かれた気概

  「国家の経済政策は政財界の思惑や利害に左右されてはならない」
  という固い信念で通産行政を強引に推進する
  主人公の闘いと挫折の物語。

  こうした生き方に感動するとともに、
  そこに描かれている通産省の気風に共感して、
  学生時代の私は通産省への就職を決断したわけです。

  たしかに「官僚たちの夏」に描かれた気風は、
  かつての通産省には残っていました。
  気骨のある先輩や同僚、後輩もたくさんおられました。

  しかし同時に、霞が関全体は、
  「官僚たちの夏」に描かれていた時代から、徐々に、
  しかし確実に、政治や財界に対して筋を通すことが弱まり、
  逆に彼らにいかにおもねて、
  自らの「省利省益」を追求するかが、
  出世の尺度になるような気風が生じておりました、

  もちろん描かれている時代も違いますから、
  当然といえば当然なのですが、
  やはり「官僚たちの夏」に描かれていた気概や気風は薄れ、
  現実の霞が関は、別世界となっていってしまいました。

 ★本当に若者は天下りをしたくて役所を目指すのか?

  天下り規制に対する批判として、
  そんな規制をすると、優秀な人物が霞が関に来なくなる、
  それで国家運営ができるのか?
  という批判があります。

  しかし、「官僚たちの夏」の主人公
  (当然実在のモデルがおいでです)は、
  次官を退官した後も、
  「民間企業に専務や副社長に天下りして、
   社長族に頭を下げる気もなかったし」、

  「公社公団の類へ天下りするのも潔しとしない。
   むしろ天下の大浪人になることが、本懐であった」とあります。

  まさに私達の世代は、そうした、官僚像や気概、志に胸打たれ、
  役所の門を叩いたわけです。

  確かに天下りが目的で役所に就職しているような方々も
  いないわけではないかもしれません。
  しかし、本来、官僚として天下国家の役に立とうと志した
  人間の多くは、そんなところで就職先を選んだわけではないと、
  私は思います。

  むしろ、官僚組織が天下り規制に抵抗するという報道が
  出れば出るほど、真っ当な志を持って、
  「公」のために働こうという人材の公務員離れが進む、
  そんな気がしてなりません。

 ★「新・人材バンク」のいかがわしさ

  先日号にも申し上げたとおり
  結局
  「新・人材バンク」というのも、
  われわれが主張する天下り禁止の強化を緩めて、
  オールジャパンの天下りバンク、
  天下り追認機関となる可能性が極めて濃厚です。

  要は、天下りを実質的に解禁し、
  省庁の枠を超えて天下りあっせんを堂々と行おう
  という構想になりさがっています。

 ★「骨抜き」の知恵者

  私の想像では、
  大抵こういう構想は役所の中に「知恵者」がいて、
  上手に骨を抜いて、いかにも改革をやりましたよ、
  でも現実にはきちんと再就職のお世話はできますよという、
  そんな案を作る人がいるものなのです。

  それが「霞が関」なのです。
  道路公団改革でも、省庁再編でも私はいやというほど
  そうした部分を見てきました。

 ★本当に「志」のある人材を集めるために

  逆に、そのような組織で、天下りの斡旋をしてもらう前提で、
  本当に「志」のある若者が霞が関の官僚を目指すでしょうか?
  「官僚たちの夏」に感動したような若者が
  省庁を目指すでしょうか?

  故・城山三郎さんが感動的に描かれた「国士」たる官僚の姿と、
  「新・人材バンク」なるものがどうしても結びつかない。
  それが私の率直な感想です。

  道路公団民営化の議論のときにも思ったのですが、
  本質的でない形だけの改革案と
  それに抵抗する省庁の対立の図式を演出し、
  支持率の低下に歯止めをかける、
  もう、国民は何度もそのようなことではだまされない
  と思うのですがいかがでしょうか。

  小手先の「新・人材バンク」ではなく、
  政策への共感や人物の国を思う「志」を前提に、
  もっともっと多くの人材を民間からも中途採用する、
  組織あっせん方の天下りは厳禁する

  採用時点から省庁単位で
  省益を追及する省益官僚を採用し育てるのではなく、
  国益を追求するような官僚を共同採用し、
  育て、処遇するような、新たな官僚評価の仕組みを作っていく、

  そして社会全体として、
  「公」に奉仕しようという人材の流動化を推進する、
  以前にも書かせていただきました、
  総合的な公務員制度改革なくしては、
  この問題は解決しないと思います。

  いずれにしても城山三郎さんには、
  「官僚たちの夏」、「落日燃ゆ」、「男子の本懐」、
  「粗にして野だが卑ではない」など
  多くの名作で感動を与えていただきました。
  謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

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   第156号  2007.04.02 発行  (配信数:2846部)

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