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第166号 2007.12.17
皆さん、こんにちは。
松井孝治です。
本年最後のメールマガジンでは、
私の現在の担当分野のひとつである、
治安・安全分野の問題を提起したいと思います。
その中でも、
本日は銃規制のあり方を考えてみたいと思います。
◆佐世保のスポーツクラブでの散弾銃乱射事件は、
皆さんの記憶にも新しい問題であると思います。
まずは、犠牲になられた方々のご冥福をお祈りするとともに、
ご遺族や重軽傷を負われた方々に
心からお見舞いを申し上げたいと存じます。
許可銃(合法銃)を用いた犯罪自体は、
わが国において 統計的には増加しているわけではありませんが、
今回の事件や、先日第一審の判決がくだされた宇都宮事件は、
わが国の銃規制のあり方に 少なからぬ問題が内在していることを
浮き彫りにしていると思いますので、
以下、やや技術的なことも含め、
久しぶりに詳細に意見を述べたいと思います。
☆ 銃の所持許可は甘すぎないだろうか
まず第一点は、
今回の事件で、被疑者(犯人)に銃所持許可を
与え続けていたことが適切であったかという点です。
約2年半前、被疑者の不審な行動について
近隣の住民から警察に通報がありました。
警察署は、通報後近隣住民宅を訪問して事情を聞き、
被疑者にも電話で連絡し、入院歴の有無を確認するとともに
先台(さきだい)という、銃の弾込めの装置
(これがなければ銃は発射できない)
を預からせてほしいと依頼し、
基本的に 被疑者もそれを承諾したといいます。
しかし警察の業務多忙のためか、なぜか、その後、
この件は そのままになり(先台も預からず)、
通報の4ヵ月後、被疑者から、銃保持の許可更新申請があり、
警察署員の面接の上、銃保持許可を更新されています。
事情は色々あったのかもしれませんが、
近隣住民の通報にもかかわらず、
被疑者は その後も合法的に銃を保持し続けたことは 事実です。
警察の方に事情を聞くと、
銃の所持許可を与えるためには、
法定の欠格条項(不許可要件)を満たしていないことが必要ですが、
その欠格事項(不許可要件)の法律上の規定が厳しすぎて、
結果として、多少近所の評判が悪い程度では
銃の所持許可をおろさざるを得ない場合があるようです。
☆ 銃所持許可基準はどのようなものか
では具体的には、銃の所持許可基準
(実際には欠格要件ですから不許可基準と申し上げるべきですが)
はどのようなものでしょうか?
銃刀法第五条に欠格要件(不許可基準)がずらりと並んでいます。
〇 一定の年齢に満たない者
(原則:猟銃は20歳、空気銃は18歳)
〇 精神障害等で
適正な取扱いができないおそれがある者 又認知症である者
〇 アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚せい剤の中毒者
〇 その他、自己の行為の是非を判別する能力がない、
又は著しく低い者
〇 住居の定まらない者
〇 許可を取り消された者(5年間)
〇 不法所持等の銃刀法違反により罰金以上の刑を受けた者(5年間)
〇 その他銃砲・刃物等を使用した犯罪行為をして
罰金以上の刑の執行を受けた者(5年間)
〇 暴力団員及びその関係者
〇 その他、他人の生命若しくは財産又は公共の安全を害する
おそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者
〇 同居の親族が他人の生命若しくは財産又は公共の安全を害する
おそれがあると認められる者
これらに該当する場合、銃の所持許可を与えてはならないのです。
一見、結構厳しいように見えるかもしれません。
こうした基準を満たしているかどうかについて、
警察は、医師の診断書を求めたり、近所や職場の評判を聞くなり、
それなりの調査をして許可をおろしていることは事実のようです。
☆ 一度許可したら取り消しは困難?
でも、今回や宇都宮事件などは
それでも必ずしも十分でないのではないか
と疑われる事例ではあります。
現場の声などを伺いますと、
特に、一度許可を与えてしまったものの
取り消しがなかなか困難であるとの評価を耳にします。
現に、平成18年に銃所持の許可の更新申請は
約5万件近くあったのですが、
そのうち、更新が認められなかったのは わずかに5件、
さらに、不許可要件(欠格要件)に当たるとして
許可されなかったのは わずかに3件ということです。
家族などが さすがに問題があるといっている場合でも
法律的な要件に合致しなければ不許可にできないので、
警察署員や家族で説得して 自主返納にしてもらっている場合も
存在するといいます。
☆ 「不審人物」の銃所持をいかに防止するのか
また、上記の不許可基準の中で、
佐世保事件、宇都宮事件のようなケース、
すなわち挙動不審な人物、
近所とトラブルを起こしている人物などは
法律的には
「他人の生命若しくは財産
又は公共の安全を害するおそれがある
と認めるに足りる相当な理由がある者」
という条項で 銃の所持を不許可にすることが妥当
と思われるのですが、実務上はそう簡単ではありません。
最後の「相当な理由がある」というところで、
その人物が危険であることについて
客観的な証拠がないと 不許可に出来ないようなのです。
実際、不許可処分の取り消しを求める行政訴訟なども
起こされています。
今回の被疑者が
夜中の2時に 隣家にトイレを借りに行った等の
不審な行動があったという話がありますが、
その程度の奇行では
「他人の生命若しくは財産
又は公共の安全を害するおそれがある
と認めるに足りる相当な理由がある者」
と認めることができないというのが、
法律上の判断のようなのです。
☆ 銃規制の強化は個人の自由の侵害に当たるのだろうか?
ここで皆さんに考えていただきたいのは、
銃の所持というのが、
人間に本来認められている自由の範疇にある
ものなのかどうかという点です。
人権すなわち、
さまざまな自由権や社会権、平和的生存権など
本源的な個人の権利については、
国家権力の不当な介入があってはならないことは当然であり、
法律上認められた介入であっても、
その要件は極めて慎重に解釈しなければなりません。
刑事裁判に当たっての「疑わしきは罰せず」
という推定無罪原則と同様、
慎重に判断する必要があると考えています。
しかし、銃の所持許可についても、
疑わしい人間の銃所持許可を認めてよいのか、
あるいは一度許可をおろした場合であっても、
異常な行動などが頻発した場合は
思い切って取り消しを行うべきでないのか
ということが問われています。
銃刀法の運用が、
「他人の生命若しくは財産
又は公共の安全を害するおそれがある
と認めるに足りる相当な理由がある者」
すなわち
「危険人物であるという客観的な証拠のある人物」
でなければ、
銃の所持許可を与えざるをえない
というような運用になっているとすれば、
極めて問題が大きいと私は考えます。
むしろ、本質的には、
ネガティブな(欠格)要件にあてはまるものには
許可しないという基準ではなく、
その人物が、
銃のような殺傷能力の高い器具を与えても、
万が一にもそれを悪用しない、
信頼できる人物である場合のみに
銃の所持許可を与えるという、
厳格な審査が必要なのではないかと思います。
その意味では、
欠格要件(ネガ要件)をポジ要件にするというところまで
至らなくても、
少なくとも、現行銃刀法第五条の許可基準を見直し、
警察が、地域でトラブルを起こしているような人物や
挙動不審な人物には
もっと弾力的に許可を取り消せる(許可を与えない)、
或いは、銃を一時取り上げて保管できるような制度にする
必要があると思います。
ご批判もあるかもしれませんが、
私は、銃規制に関する限りは、他の規制とは異なり、
警察当局の取り締まりに、
ある程度裁量の余地を残すようにしなければ
実効性が確保できないのではないかと考えています。
☆ 銃の保管は「自己管理」でよいのか?
第二点は、銃の保管場所の問題です。
今回の佐世保事件でも被疑者は自宅に銃を保管しておりました。
銃刀法は原則、銃は自己保管ということになっており、
例外的に射撃場や銃砲店での共同保管を認めています。
しかし、先ほど、少し述べましたが、
長崎県警は一時期、今回の被疑者のような場合に限らず、
安全確保のため、
銃の重要部品である先台(さきだい)を
銃の所持者一般から可能な限り預かる
という運動を行っていたようです。
自主的な取り組みとはいえ、
警察が自宅で銃を管理している方々から
その先台を保管する必要性を感じていた ということですから、
むしろ、原則的に銃の保管は、射撃場や銃砲店、
或いは 警察署で実費を取ってあずかることを
原則とした方が安全ではないでしょうか。
あるいは、
原則として先台は警察に預けなければならない
としてしまうのも一案ではないかとも思います。
原則として、と申しましたのは、
一部、猟師さんのように、季節的には
恒常的に猟銃を手元に置かなければならない場合には
一定の配慮が必要と考えられるからです。
☆ 警察も把握できない実弾保有実態
第三点は、実弾の保有状況の把握の必要性です。
佐世保事件では、被疑者がなんと2700発もの実弾を
所有していたことが問題になりました。
そして、そのことよりも私にとって驚きだったことは、
その事実を警察が把握できていなかったことです。
よく伺ってみますと、警察は、
ある個人に年間何発の銃弾の販売を
許可するかという点については権限を持っていますが、
その人物がそのうち何発を消費し、
現に何発の実弾を所持しているかについては、
報告を徴収するなどの権限も与えられていないし、
実際わからないということでした。
弾薬の保持については、火薬類取締法という法律に基づき、
一定数の弾薬については 爆発物の安全管理の観点から、
火薬庫に保管することを義務付けるような規制はあっても、
治安の確保の観点から、個人がどれだけの実弾を保有しているかの
報告徴収制度や規制は存在しないのです。
この点は火薬類取締法の改正ということになるのかもしれませんが、
やはりきちんとした規制が必要でしょう。
☆ 通信販売やインターネットで購入できる散弾銃
第四点は、銃の販売方法のあり方です。
佐世保事件の被疑者は4丁の銃のうち3丁までは
銃砲店で購入したことが明らかになっていますが、
もう1丁の銃は購入ルートが不明であると伺いました。
新聞等で、容疑者がインターネットで購入
という報道が流れたのは そのせいかもしれません。
しかし 本当に散弾銃がインターネットや通信販売で
購入できるのか疑問に思い、事務所でネット検索をしてみましたら
すぐにそうしたサイトが発見できました。
正規の許可を受けた銃砲店が インターネット販売をしています。
宅配便取り扱いで着払いも可能とのことです。
しかし、銃刀法の規定(21条の2)では、
販売事業者等は許可証を提示した場合でなければ、
銃砲等を譲り渡してはならない という規定があります。
普通にこの条文を解釈しますと、銃砲は対面で許可証を確認し、
本人確認をしないと販売できないと解釈すべきだと思いますし、
警察庁の担当課長に最初に話を伺った際には、
原則銃砲店で対面で販売しているはずで、
インターネットで銃砲販売しているかどうかは確認しなければ
わかりませんとのことでした。
警察庁も あくまで原則は
対面販売と解釈していたのではないかと 推測しますが、
現実には上記のとおり、インターネット通販の実態があります。
参議院内閣委員会でこの点を質したところ、
許可を受けた者が、許可証を業者に郵送し、
許可証とともに銃砲を配達するような場合は
必ずしも違法ではないとの答弁がありました。
しかし、そうだとすると、
許可証と購入者の本人確認ができませんし、
また 銃砲が宅急便業者によって運搬されること
の安全確保なども 十分とは言い切れません。
銃のような危険物は、
許可を受けた銃砲店と 所持を許可された個人の間で、
直接確認の上 譲り渡されることを条文は想定しているわけで、
ゴルフクラブでもあるまいし、
宅急便業者に配達をゆだね、
運搬中の紛失や盗難が起こったときに
誰が責任を問われるのでしょうか?
私は、やはり銃砲の販売は
対面販売の原則を 安易に崩すべきではないと考えています。
その意味で、現在の条文のままでその運用を改めればよいのか、
条文に修正を加えなければならないのかを
精査しなければなりません。
☆ 担当警察署員は超多忙
最後に、法律面ではありませんが、
警察官の人員配置の問題、あるいはその絶対数の問題があります。
今回の事件を契機に、銃器規制に携わっている警察官の
担当 業務を伺いましたら、以下のとおりでした。
防犯ボランティア、警備業、古物営業、質屋営業、探偵業、
ストーカー、DV、相談、交番(空き交番対策など)、
パトカー、鉄道警察隊、自殺、家出人、酔っ払い、
少年事件(街頭補導、児童虐待、児童ポルノ、少年相談など)、
風俗営業、賭博罪、わいせつ事件、売春、
トラフィッキング(人身売買)、外国人労働者、偽ブランド、
食品表示偽装、ゴミ不法投棄、ヤミ金融、悪質商法(霊感商法)、
建築偽装、インターネット関連
(不正アクセス、違法有害情報、ホットラインセンター関係)、
銃器関連、雑踏警備(年末警備や花火などの雑踏)、
学校の安全対策、水難・山岳遭難、鳥インフルエンザ関連など
特に、DVやストーカー、悪質商法、ヤミ金融、
風俗営業の取り締まり、インターネット関連、少年犯罪など、
最近大きな問題となっている事案の
取り締まりが銃器規制と同じ生活安全担当とされていることに
驚かれた方も 多いのではないでしょうか?
では、そうした担当にどの程度の人員が割かれているのでしょうか。
先日の参議院内閣委員会での 生活安全局長の答弁によりますと、
今回の事件を担当している佐世保署の総署員数は249名
そのうち銃器対策を含めた上記の生活安全対策に
従事している署員は僅か3名ということでした。
こうした状況では、生活安全担当の警察官は、
常に多数の案件をかけもちで
処理せざるを得ない状況に置かれており、
一般的に多忙な警察官の中でも、
特に超多忙な毎日をすごしているということです。
銃刀法の規制は、
あるいは、議員立法で厳格化することは可能かもしれませんが、
こうした体制では、いくら法規制を厳格にしても、
とてもではありませんが
実際の現場の規制を厳格にすることは不可能です。
警察官の定員管理、予算配分、
さらには、他の警察業務とのバランスも考えなければなりません。
こうした問題も含めて、
国民の安全の確保のための体制強化を 真剣に検討することが
求められています。
今年最後のメールマガジンもやはり長文になりました。
今年は 私にとっては改選期の年ということもあって
節目の一年でしたが、
政界激動の一年であり、過ぎてしまえば、あっという間でした。
本年一年のご指導にあらためて感謝、御礼申し上げます。
皆さまお揃いで、よいお年をお迎えください。
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☆おしらせ☆
地元の活動拠点である京都事務所では
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●京都から、この国のかたちを変える。●
第166号 2007.12.28 発行 (配信数:2908部)
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