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第168号 2008.3.23
皆さん、こんにちは。
松井孝治です。
いよいよ3月も下旬に入り、
揮発油税の暫定税率の期限切れも迫り、
国会周辺は 緊迫の度を強めつつあります。
☆☆ 道路特定財源一般財源化の協議には 応ずるべき
政府・与党も 税制改正案の修正案をとりまとめつつあるようで、
民主党にも 協議の呼びかけが行われています。
私は、個人的には、
30数年続いた「暫定」税率の問題もさることながら、
改革の本丸は 道路特定財源の一般財源化であり、
もし政府が、本気で、特定財源全額の一般財源化を提案するのなら、
民主党はきちんと 交渉のテーブルにつくべきであると考えています。
今の財政状況と、
特に医療・社会福祉の崩壊の実情を考えたときに、
暫定税率の撤廃もさることながら、
巨額の道路特定財源を 一般財源化することの優先度が高い
と考えているからです。
交渉のテーブルにつくことは、
必ずしも妥協をすることを意味するわけではありません。
小泉内閣や安倍内閣での 妥協的な一般財源化もどきでなく、
全額の一般財源化が必要ですし、また、暫定税率については、
きちんとその趣旨を国民に問い直した上で、
暫定措置ではなく、
一般財源として使用することに 納得を得るべきです。
要は 国会の場できちんと話し合いを行うことが大切です。
その結果、見せ掛けの一般財源化であるなど、
問題があれば きちんとその理由を明示して、
拒絶すればよいわけです。
話し合いも最初から拒否するような態度を取ることは、
公党としては自己否定との 批判をうける可能性もあります。
☆☆ ふたたび国家公務員制度について
世間では、日銀総裁問題、
そして道路の問題がクローズアップされがちですが、
前回にも述べましたように、
霞が関改革、すなわち 国家公務員制度改革の議論も
大詰めに差し掛かりつつあります。
今回の国家公務員制度改革の議論には、
幹部の人事をある程度、内閣に一元化できないかなど
重要な論点が含まれていることは 事実です。
今の官僚はそれこそ、ゆりかごから墓場というと言い過ぎですが、
社会人生活のすべてを
縦割りの組織の中で採用され、評価され、処遇されている結果、
しばしば、国益全体よりも、省益、局益追求に重きを置くような
傾向があることは 残念なことであり、
この点について、
幹部公務員職制度のようなものを導入し、
局長一歩手前からは、全政府的な人材登用を図るべきこと、
その際、役所の内外から優秀な人材を自由に任用すべきことは
私が長年主張していたことであり
(岡田政権500日プランでも提案させていただきました)
政府案も一つのたたき台にして、そのような方向で
大いに議論させていただきたい と考えています。
しかし、霞が関改革、あるいは統治構造改革について、
今回、本質的議論が尽くされているかといえば
必ずしもそうは思えません。
今回の公務員制度に関連した細目の議論は 次回以降に譲り、
本日のメルマガでは、本質的な議論についての
問題提起を行いたいと思います。
☆☆ 医師と官僚の空洞化
最近、国家公務員制度・霞が関改革に関連し、
有識者の方々や、世代を超えて、
個人として信頼する官僚や元官僚の方々とも
積極的に意見交換させていただいています。
その中で、多くの方々が非常に懸念されていることが、
最近の官僚に、急速に責任感や自負がなくなりつつあること、
特にこのところ、優秀な学生を採用することが
著しく困難になりつつあること、です。
先日東京大学法学部のある教授とお話していましたら、
今の状況では
「数年先には 本学から新卒で
官僚組織に就職するものはいなくなるかもしれない」
と真顔で心配されていました。
別に東大法学部だけが 人材供給源ではないとは思いますが、
建学以来、官界への人材供給が
社会的使命と自他共に認識してきた東大、
特にその中核を担ってきた法学部の現状を伺うと、
現状の急速な変化の一端を 伺い知ることが出来ます。
最近、官僚の問題を議論するときに、
医師不足の議論との共通点を感じます。
医師も官僚も従来は 社会的に尊敬される職業とされてきました。
ところがある時点から 両者とも厚遇批判の対象となり、
医師は診療報酬をカットされ続け、
逆に、医療過誤などの法律的責任は重くのしかかり、
特に 病院勤務の長時間労働もあいまって、
急速に医師不足が表面化してきています。
最近、産婦人科、小児科、麻酔科のみならず
外科や内科に至るまで、医師のなり手がなくなってきています。
10年後、20年後には、たとえ都心部であっても、
私たちが、深刻な病気になったときに
必要な手術や治療が受けられるのかどうか
の保障がなくなってきております。
医師の問題は、
患者たる国民の生命身体に直結する問題ですので、
遅まきながらも社会問題化しており、
私も「医療現場の危機打開と再建をめざす国会議員連盟」に参加し、
党派を超えてこの問題を真剣に取り組んでいかなければならないと
考えています。
☆☆ 官僚の空洞化は 誰の責任?
では、官僚の問題はどうでしょうか?
前回も申し上げましたが、
どこの国でも、官僚は、政治家のスタッフです。
その質が劣化をして困るのは、実は最終的には国民であります。
問題は、医師の問題とは異なり、
官僚の空洞化は一般国民の目に 見えにくいということです。
その被害をまず、直接的に被るのは
閣僚をはじめとする政治家なのです。
官僚のレベルが下がった分以上に、政治家がその資質を向上させ、
官僚以外の政策ブレーンを駆使して、
競争力のある政策を打ち出せる体制を
作り上げられているのなら別ですが、
今の国会を見ていると、
与野党ともにそのような状況にあるとは思えません。
私は、シンクタンクなど、
非霞が関の政策集団をきちんと育てていくことが
政治家の使命の一つだと考えていますが、
同時に霞が関の建て直しも 極めて重要な課題であると思います。
今の政府の国家公務員制度改革でも、
あるいは野党中心の官僚バッシングでも 欠けている論点は、
閣僚をはじめとした政治家のリーダーシップの強化です。
確かに今の官僚組織の一部の腐敗や惰性、税金の無駄遣いなどには
言い訳の余地のないものが多数存在します。
しかし、それらは多くの場合、大臣を筆頭に、
政治家が官僚組織に対する統治能力を発揮してこなかった
ことによるものであります。
(それとの裏腹で官僚組織が傲慢になってしまっていることも
否定は出来ませんが)
大臣が平均10ヶ月くらいの在任期間でころころ変わる。
政策の勉強も不足していて、国会答弁も官僚に頼りきり、
それどころか、地元の陳情処理や補助金の斡旋、
挙句の果てには、自らの政治資金パーティーのチケット
の売りさばきまでも 官僚組織に依頼するという体たらくでは、
自分の担当する行政分野の監督はおぼつきません。
そんな状況にもかかわらず、
結果として、官僚組織で問題が発生すれば、
与野党ともにすべての責任を 官僚組織のせいにする。
メディアも政治も(それも監督責任のなる与党でさえ)
一斉に官僚バッシングをする。
レッドパージにも似た、こんなカルチャー、社会的風潮のもとで
それなりの自覚を持った官僚でさえ、
まともに働く意欲はわかないのではないでしょうか。
☆☆ 能力本位での大臣の起用と その任期の長期化を
ではどうしたらよいか。
まずは、官僚を指揮監督する閣僚の任命は、能力本意にして、
なおかつ、その任期を長期化する必要があります。
一政権=一内閣、すなわち、
人心一新とか称して改造を繰り返し、
大臣を政治家の順送り人事 の対象としないことが重要です。
そのようにして、閣僚任期をのばして
(同時に総選挙で国民の信を得た総理は
極力衆議院任期に近いだけ総理を務めるのが筋ですから)
総理も閣僚も4年近くその任を勤め、
副大臣や政務官をはじめとする政治任用職をチームとして
最大限活用すれば、おのずと
官僚に対する統治能力は大幅に強化されます。
少なくとも、高い識見と組織改革意欲のある大臣が
副大臣や政務官を筆頭にした政治チームを編成し、
3年も務めれば確実に成果は現れます。
ちなみに、私が、かつて通産省に勤務していたとき、
大臣が、官僚による大臣レクに
政務次官を同席させるという風景には
一度もお目にかかりませんでした。
それどころか、一般に大臣は 副大臣や政務官ではなく、
自分だけに官僚組織のもつ情報を
レクチャーしてもらいたがる風潮があります。
それは大臣が 政務次官(現在でいえば副大臣・政務官)を
いかに自らのスタッフとして信頼もせず、
ましてや使いこなしていないかの 証拠でもあります。
☆☆ 政府・与党内の調整は大臣、副大臣、政務官のチームで
今の官僚が疲弊する原因のひとつは、
法案や予算などを決定する際の、省庁間調整や、
与党の各部会での説明と了承の取り付けにあります。
政府部内に大臣等の政治家が多数入っているのですから、
大枠は、閣僚懇談会や、副大臣会議、政務官会議で
省庁間調整を行い、そこでも解決しない問題は、
総理と関係閣僚がトップレベルで協議し
判断しなければいけないのです。
しかるに今は、そうした領域を
ほとんど官僚の世界に丸投げしているので、
果てしもない省庁間の権限折衝や、
各部会での官僚バッシングのような
状況を引き起こしているのです。
役人同士で議論すれば、
1週間徹夜交渉をしてもまとまらないものが、
閣僚同士で胸襟を開いて議論すれば、
30分で解決するような事例は、山ほどあります。
それを行わないのは、官僚の政治家不信と、
同時に政治家の怠慢であると思います。
こうした政治家と官僚の役割の見直しを
提案も実践もせずに、官僚の政治家との接触制限をすれば、
事足れりと考える方がいるとすれば
極めて本質とかけ離れた議論ではないでしょうか。
☆☆ 社会全体からの官僚の登用を
私は、新卒の国家公務員志望者の質を上げることも
重要な課題と考えておりますので、安易な一括採用論や、
バッシング的な発想に立ったキャリア官僚不要論には
慎重な立場です。
しかし、同時に、
新卒を30数年基本的に同一官庁で働かせるという
従来モデルだけでは、もはや、やる気と能力があり、
猛烈に仕事をする官僚は
確保できない状況にあると思っています。
有能な人材確保のためには、
学卒で有能な人材を採用することのみならず、
同時に、課長補佐クラス、課長クラス、局長・審議官クラスなど、
各層に、社会全体からやる気と能力のある人材を
登用していける体制を構築していくことが
緊急に必要になっています。
☆☆ 人材移動の促進を
前回
「天下りについても、
従来私を含め、民主党が申し上げてきた
天下りの禁止措置だけでは
やはり不十分である と考えています。」
と書かせていただきました。
現状では、
いわゆる肩たたき(早期勧奨退職と組織的就職斡旋)は
禁止すべきという考え方は不変ですが、
自己都合で退職し、自らの知見を活用して、
民間での活躍の場を求めるような
公務員の離職後の再就職制限は弾力化し、
同時に民間から中途採用で公務に奉職したい方の登用を
促進することによって人材の流動化を促すべきと考えています。
(もちろん、かつての公務員としての
地位利用などの行為規制は必要です)
☆☆ わが党の政策も見直しが必要
その関係で、自己反省もこめて申し上げれば、
過去のわが党の方針であった、
公務員の関係民間企業等への再就職規制の長期化・厳格化も
見直しが必要かもしれません。
また、公務員出身者が存在することを理由にした、
法人への補助金交付や事業発注を禁止する法案のような
硬直的政策も 慎重な検討が必要だと思います。
私はこれまで天下りや税金の無駄遣いについては激しく批判し、
その是正策を世に問うてきたつもりですし、
今後の国家公務員制度改革でもそうした天下りをせずとも
国家公務員が国益のために働き続けられるような
制度を作らなければならないと考えて検討を進めてきました。
たしかに、今大いに問題になっている道路関係公益法人などへの
組織的天下りとその反対給付的な補助金交付は
目に余るものがあり、そうした天下りを維持するための
財政支出は厳になくさねばならないことはいうまでもありません。
しかし、かつて、組織的な天下りの根絶のために、
私自身も主張し、民主党の政策となっている
公務員経験者の再就職規制は、少なくとも
外部からの人材登用には大きな妨げとなることも事実です。
民間人が一度政府部内に入って仕事をすれば、
向こう数年間は 自分の専門分野に戻れない
といった規制が適用されたり、
国家公務員経験者が在籍するという理由だけで、
当該法人に補助金支出や事業の発注を禁止する
などという法案を策定すれば、
いったい何が起こるのか
冷静に検討していかなければなりません。
私が長年主張している自由任用、
いわゆるリボルビングドア(回転ドア)方式で、
民間からも人材を登用し、そうした人材が一定期間公務を担い、
そしてまた自分の専門分野である民間法人にも戻れるような
流動的な人材登用が著しく困難になる危険があるからです。
近い将来、民主党が政権をとった時に、
官僚、民間人を問わず、わが党の政策に賛同・共鳴し、
リスクをとって政権中枢で働いていただける方に
二の足を踏ませないような制度を構築していかなければなりません。
☆☆ もうひとつ、天下り根絶と人材活用のために必要なこと
今、各省庁が、
膨大な数の職員に早期退職勧奨を行い、
それらの方々に組織的再就職斡旋を行っているのは、
基本的に各省庁に級別の定員があり、
また、年功序列的賃金体系のため降格が
事実上禁止されているからです。
私個人としても、気力・体力がまだまだ充実し、
非常にすぐれた能力の持ち主が、
更新に道を譲るという名目で、組織の斡旋に応じて、
外郭団体の理事に再就職されているような事例を
数限りなく見てまいりました。
そうした方々の多くは、
決してそうした職場を望んでいるわけでもなく、
組織(後輩)と自分の生涯設計の中で、
やむを得ずそうした斡旋を受け入れておられます。
そして組織としては、そのような外郭団体の多くに、
再就職者の人件費の何倍もの公金が
投入されていることも事実です。
私は、この際、組織的再就職斡旋を禁止するとともに、
国家公務員の定年を段階的に65歳まで延長し、
有能な方々には、年金支給開始年齢までの間、
公務に奉職してもらうことが 適切ではないかと考えています。
無論、その際には、今の国家公務員法の規定を変えて、
一定の役職を降りた段階で 給与も大幅に減額するような工夫は
必要でしょう。
しかし、道路特定財源だけでも
天下り先に年間2千億円近い財政支出がなされていること
を考えれば、それらの団体への支出も含めた
トータルとしての実質人件費の中で、官僚を65歳まできちんと
使いこなすことは決して不可能なことではありません。
組織的な再就職斡旋を廃止すれば
官僚の、再就職斡旋を行ってくれる
各省庁当局のみへの忠誠心も薄れます。
また、国会での立法補佐事務や
政策評価機能の強化のための定員を抜本的に充実強化し、
そうした部門に国家公務員の転籍をうながすことで
霞が関のみならず 国会での政策立案や立法機能の強化を
図ることも可能になるでしょう。
国会に独立した政策シンクタンクを作ることも一案です。
要は、まだまだ働ける国家公務員を役所の外に追い払い、
その分の人件費を別名目で支出するくらいであれば、
永田町・霞が関界隈、すなわち、
日本の政策立案センターにきちんとした人材プールを作り、
政策立案能力を強化していくことが
今ほど求められている時期はありません。
そして、そのことのコストは、
実は 高規格の高速道路を年間10km作る程度の
財源があれば十二分にできるのです。
いずれにせよ、
公務員制度改革の本質は、官僚バッシングではなく、
霞が関から、地域の現場にいたるまで、
公共のために働くという人材を 社会から幅広く
吸い上げていくことが出来る 仕組みを作ることにあることを
力説しておきたいと思います。
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●京都から、この国のかたちを変える。●
第168号 2008.03.23 発行 (配信数:2918部)
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