第172号  2008.6.7


 皆さん、こんにちは。
 松井孝治です。

☆昨日、国家公務員制度改革基本法が
 修正のうえ可決成立いたしました。
 何度も申し上げているように、
 橋本行革が一定の成果を残しつつも、やはり途中で挫折した中で、
 行政改革のソフトウェアとも言える国家公務員制度、

 中でも、政権中枢の首相官邸と霞が関の
 人事ルールを再設計すること、

 そしてその先には、
 梁山泊のような、
 国の将来を考える集団を霞が関を作りたい、
 そこから刷新的な政策が生み出され
 実行されていく拠点を作っていきたい

 というのは、
 私の悲願でありライフワークだと思っています。


☆公務員制度改革というと幅広い概念で、

 ここ数日大騒ぎになっているタクシー不正

 (いかにもせこい話ですが、せこいということで済まされるものでなく、
  少なくともタクシーの個別指名配車と金品(バックリベート的)の供与が
  セットになっている場合は、
  「不正」という言葉を使わざるを得ません。)

 とか 行政の各種無駄遣い・不祥事などを根絶すること、
 さらに言えば、それらの背景にある組織斡旋型の天下り
 をしないですむ制度設計も、とても大切なことです。

 しかしこれらは、公務員制度改革の必要条件であっても
 十分条件ではありません。
 すなわち、こうしたことを厳格に規制することは
 絶対に必要な最低限の前提です。

 でも、例えば、天下りを禁止したら、
 すべての官僚の、あるいは霞が関の 問題が解決し、
 国民にとって利益になる行政制度が出来上がるかといえば、
 全くそんなことはありません。

☆本質的に大切なことは、
 特に霞が関や首相官邸で政策スタッフとして
 働いてくれるスタッフが、
 国のため、世の中のため、国際的な共通の利益のために、
 働いているという誇りと喜びをもって、
 それこそ粉骨砕身働けるような環境を作り出すこと、

 20歳過ぎに専門の行政マンとして官庁に入った人も、
 民間企業などで経験を積んだのちに
 特定のプロジェクトの実現のために行政に参画する人も、
 ともに協力し合い、競い合って働ける霞が関

 それぞれの分野で日本最先端の知識・経験・能力を有し、
 かつ、世の中のために働きたいという動機に支えられた
 人材が集う霞が関

 に変身させなければ、
 世界の政策競争の中でおよそ日本が生き残れるはずがないのです。

☆世界中が、各国内に資本や人材を集め、
 高い付加価値の生産活動を奨励し、
 異なる価値観の共生につとめているときに
 日本では非常に情緒的な議論で国を閉ざし、
 チャンスを自ら葬っている感があります。
 
 そうしたことを十分な戦略性とロジックをもって
 政策展開の一環で意識的に判断して行っているのならまだしも、

 声の大きい政治家のバランスをとるような形で、
 また各省の縦割りと権限意識の中で、
 漂流しているのが永田町・霞が関の現状だと思うのです。

 経済政策にしても、社会保障政策にしても、文教政策にしても
 それぞれ日本を代表する第一線の専門家が議論を尽くして
 最善の解を求めるのではなく、

 あわただしい与党の朝の部会での政治家の大声の罵声に
 どう対応するかに追われたり、
 各省単位の予算の限界や権限争いの中で、重複的な政策制度が
 ばらばらに、使い勝手悪く作られてしまっていたり、
 各省間で利害が対立する政策は際限なく先延ばしされたり、
 ともかく、全体としての政策の有効性を失ったり、
 ちぐはぐになっているケースが非常に多いように思います。
 
 こうした政策のレベルを上げていくためには、
 
 ともかく省益、局益根性をなくし、全体的な戦略目標を明確に定めること、
 外部人材も登用して専門性を高めていくこと、
 頑張って、成果を挙げている人材を処遇し、
 働くインセンティブ付けをしっかりと行っていくこと、
 が大切です。
 

☆だから、あえて誤解をおそれずに申し上げれば、
 今回の改革の最重要ポイントは

 内閣一元人事システムと
 行政機関内外を問わない人材の登用のためのシステム作り
 (加えて昨年の法改正で認められた能力実績主義に応じた人材評価)
 だと私は考えています。

☆そしてそうしたシステムを有効に活用するためにも
 政治家がもっと自分の頭で考え、自らの責任で行動し、
 必要な調整を自ら行い、スタッフである官僚、
 特に幹部官僚の仕事ぶりは各大臣及び総理・幹部長官自らが
 日常的評価を行うという制度にしなければなりません。

 今回の政府提出法案の与野党協議そのものが
 ある意味では政治主導の課程でありましたが、
 
 基本的に重要な法案については、
 政治家がそれぞれバックについた 省庁間の代理戦争のような形でなく、
 今回のように数人の政治家が 直接かつ継続的に話し合って
 法案をよりよいものにしていくような実例を積み重ねないと、
 政治主導なんて簡単には実現しません。

☆逆説的に聞こえるかもしれませんが、
 「制度」は大切だけれども、「制度」だけでは政治や行政は変りません。
 実際に物事を動かす、政治家や官僚のマインドをえる必要がある。

 でもそのマインドを作り出している重要な要素に、
 人事制度とか組織原理がある。
 だからこそ今回の制度改革は重要な意味があると思います。

 今後必要なことは
 制度の詳細設計と、そうした制度に基づいて成功事例、
 すなわち立派な人材を多数生み出して
 世の中のためになる政策をひとつでも多く作り上げること、
 です。

☆最近、
 「骨抜きが心配だ、これからいかに官僚と戦うかが勝負だ、
  松井君頑張れ」
 とおっしゃる方が多いです。

 ありがたい激励なので、大抵は
 「まさにおっしゃるとおりです。頑張ります。」
 と答えています。

 事実、少なからぬ数の官僚は
  内閣一元管理なんて信用できない、
  何とか省庁側に幹部人事の主導権も残しておきたい
 と考えていると思います。
 これからも骨抜き工作は多々あるでしょう。

 6月3日、5日と、約2時間半にわたって、
 この法案の細部にわたるまで、私の認識を示し、
 渡辺大臣の見解と今後の取り組みを問う形で
 法案審議を行いました。
 (議事録は近日中に以下ににアップされます)

 相当程度、法律の趣旨、修正の趣旨を
 世間に明らかにして記録に残せたとは思っています。
 今後のじわじわと波状で押し寄せる抵抗とか骨抜きを許さないためにも、
 条文の解釈は重要ですのでそれなりの成果はあったと思っています。

☆でも、実は内心、
 「骨抜きとの闘い」、「抵抗勢力との闘い」、だけではない、
 何かが今後の真の闘いには必要だと思っています。 

 抵抗する官僚を悪者とレッテルを貼り、
 その「悪」と闘うことのみに正義を見出すのではなく、
 今後の詳細設計は、
 もう少し建設的なプロジェクトにしないと
 成功しないような気がするのです。

 私が今回の改革にこだわるのは、

 自分が官邸や行革会議の事務局で勤務していたとき、
 そのすべての期間ではないけれど、
 少なくとも、そのうちの一定期間、
 縦割りの省益から離れて、内閣全体の立場で仕事が出来た、
 仕事をしながら、どんどんアドレナリンが発せられる
 そんな、わくわくとした気持ちで仕事が出来た、

 あの頃の経験、興奮や爽快感・充実感を、
 できるだけ多くの官僚や政策スタッフが共有できる環境を、
 言い換えれば、
 現代版の「梁山泊」を作りたいという思いからなのです。
 
☆官僚の中には、内閣人事局なんか作っても、
 どこかの有力官庁の支配の下に、あるいは政治家の介入の下に、
 ゆがんだ人事が行われる可能性が高いと危惧する向きもあるでしょう。

 確かにそうした危険がないとは言えません。
 だけれど、では、今の
 縦割り年功序列の人事制度が素晴らしい
 と思っている人はどこまでいるのでしょうか。

 現在30代から40歳そこそこの働き盛りの官僚たちは、
 非常に大きなストレスと閉塞感を抱えて
 仕事をしていると思います。

 現に多くの若手官僚が中途で職を辞していますし、
 そんな状況が伝わったりしているのか、マスコミの影響か、
 学生の 霞が関離れ も深刻になってきています。

 そのあたりの年代が省庁の壁を取っ払って、
 のびのびと仕事ができる環境を作りたい、
 省益、局益のくびきを払って、官民の壁を超えて
 本当に良心に恥じない仕事が出来るようになったと、
 後で思えるような、そんな人事・組織改革が必要なのです。

☆内閣一元化に関する限り、各省縦割りと年功序列を打ち破れる
 (実際に打ち破るかどうかは、時のリーダーの資質によるとは思います)
 相当思い切った制度を導入したつもりです。  

 だけれど制度などというものは、大抵プラスとマイナス両方あるし、
 刃物同様まさに使いようです。

 さらにほとんどの制度や仕組みは、
 まずは初期設計どおりには動かないものです。
 動かないときにそれを微修正、ファインチューニングして、
 本来意図した理念・目標に一歩でも近づくことが大事です。

 だから、官僚を抑圧するのではなく、
 真っ当な官僚を巻き込んで、
 彼ら自身が血沸き肉踊るような環境で仕事が出来るような、
 そんな制度を作り上げていかなければ改革は完結しませんし、
 なんのためにこの改革を行っているのか
 本末転倒になりかねません。

 国家公務員制度改革を、
 官僚を叩き、そのことで政治家が胸に勲章をつけるための
 材料にしてはならないと思っています。
 メディアもそういう報道が余りにも多すぎます。

 これから1ヶ月以内に推進本部事務局が発足します。
 民間出身であれ官僚出身であれ高邁な精神の持ち主が事務局に集い、
 大いに議論しながら、
 できるだけ理想に近い、新たな霞が関と永田町を作る、

 この改革から、平成の革新官僚が生まれ、
 そして、この政策も、あの政策もそうした人材が生み出したんだ、
 新たな人材山脈がこの梁山泊から生まれたのだ、
 後世からそのように評価されるような、
 そんな制度を創り出していきたいものです。

 

 なお、ご参考までに、一昨日全会一致で議決した、
 この法律への参議院内閣委員会附帯決議
 を以下にご紹介します。

 与野党合意した法案としては異例の15項目の決議であり、
 内容的にも今後の主要な課題に言及しております。

 以前にご紹介した、
 民主党の霞が関改革・国家公務員制度改革重点事項のうち、
 今回の法案に盛り込まれなかったものも
 相当程度取り込むことが出来ました。


 〜〜〜

 平成二十年六月五日
 参議院内閣委員会  

 国家公務員制度改革基本法案に対する附帯決議

 政府は、行政の運営を担う国家公務員一人一人の職員が
 その能力を高めつつ、国民の立場に立ち、責任を自覚し、
 誇りを持って職務を遂行することとするため、
 国家公務員制度改革を推進するに当たり、
 次の事項に万全を期すべきである。

 一、国家公務員制度改革の基本理念に、
   「男女共同参画社会の形成に資する」ことを加えたことを念頭に置き、
   今後、所要の措置を講ずること。

 二、政治主導を強化するという本法案の趣旨にかんがみ、
   国家戦略スタッフ及び政務スタッフについては
   相当数の人材を登用し得るように制度設計するとともに、
   内閣官房副長官、内閣官房副長官補、内閣総理大臣補佐官等の
   増員についても検討すること。

 三、職員、特に幹部職員及び管理職員の任用については、
   縦割り行政の弊害を排除し、
   国際社会の中で国益を全うできる人材を確保するため、
   内閣の人事管理機能を強化し、公募等も活用し、
   行政機関の内外から多様かつ高度な能力
   及び経験を有する人材の登用に努めること。

 四、幹部職員の任用及び評価に当たっては、本法案の趣旨を踏まえ、
   任命権者である大臣並びに内閣総理大臣及び内閣官房長官が
   密接に協議して行うよう努めること。

 五、内閣の一元的人事管理機能の強化のための
   内閣官房への他の行政機関の機能の移管に当たっては、
   その機能を実効的に発揮させるよう十分に配慮すること。
   その際、人事院が人事行政に関し担ってきた役割を念頭に置き、
   人事行政の中立公正性の確保に努めなければならないこと。

 六、職員が国会議員と接触した場合の記録の作成、保存
   その他の管理及びその情報の公開に当たっては、
   接触内容の性質に応じた適切な記録の
   作成、保存、公開等の基準を定め、
   本制度が実質的に有効かつ円滑に機能し、
   国民に開かれた公正かつ民主的な行政の推進に資するよう
   制度を設計すること。

 七、キャリアシステムの廃止が法制定の目的であることを踏まえ、
   職員の人事管理が採用試験の種類にとらわれてはならない旨の規定を
   完全に実施するよう最大限の努力を行うこと。

 八、幹部候補育成課程の整備及び運用に当たっては、
   同課程が現行キャリア制の追認的制度とならないよう配慮し、
   特にその期間、内容等が硬直的なものとならないよう留意すること。
   また、公務員が 憲法第十五条第二項に規定する
   全体の奉仕者であることを踏まえ、
   課程対象者に特権的意識を持たせるものとならないよう
   研修等において十分配慮しなければならないこと。

 九、官民人材交流の推進等の措置を講ずるに当たっては、
   公務員が全体の奉仕者であることを踏まえ、
   その公正性及び手続きの透明性を確保するよう
   努めなければならないこと。

 十、国際社会の中で国益を全うし得る
   高い能力を有する人材を確保するための措置を講ずるに当たっては、
   海外における滞在経験あるいは生活経験のみを評価することなく、
   幅広い視野と長期的な視点を持つ人材を確保し、
   育成するよう努めること。

十一、人事評価に当たっては、
   所属する各府省間あるいは部門間によって不均衡が生じないよう、
   できうる限り公平に行うこと。
   また、守秘義務違反等に対する懲戒処分の適正
   かつ厳正な実施に当たっては、
   公益通報者保護法の趣旨を念頭に置き、
   行政内部に不祥事が隠ぺいされないよう十分配慮すること。

十二、職員に対する各府省の再就職あっせんを行わなくすることに併せ、
   定年の引上げ、再任用制度の活用の拡大等、
   勤務環境を早急に整備すること。
   とりわけ、定年の六十五歳への段階的な引上げについては
   早急に検討を進め、法制上の措置を講ずること。

十三、国民の理解のもとに、
   国民に開かれた自律的労使関係制度を措置するに当たっては、
   本法第四条の規定に則りこれを行うこと。

十四、国家公務員制度改革推進本部の事務局長
   その他の事務局体制を整備するに当たっては、
   民間人登用を含め公務内外の人事管理制度に関し
   識見を有する人材の配置に努めること。

十五、縦割り行政の弊害を排除するため、各省設置法の体系を見直し、
   行政組織編成を弾力的に行い得る制度について検討を行うこと。


 右決議する。



 〜〜〜


  ◆ おしらせ ◆

   京都からこの国のかたちを変える会
   第5回シンポジウム

   と き  7月13日(日) 14時〜16時
   ところ  リーガロイヤルホテル京都 2F
   テーマ  「社会を変える」を仕事にする
   講 師  駒崎弘樹さん
   参加費  無料(飲食は伴いません)


  素晴らしい若者を発見しました!
  駒崎さんのような人物こそ、日本の「公共」の
  明日を担う人物です。
  是非おいでください(松井記)

  お若いながらも、地域に根ざした発想と熱意、
  そして抜群の行動力で、現在、「社会起業家」として、
  病児保育という困難な仕事にNPOとして取り組んでおられる
  駒崎弘樹さんをお招きします。

  駒崎さんは、官僚や政治家ではなく、
  社会起業家として社会のあり方を変えるため、
  病児保育という困難な事業に取り組んでおられます。

  今回の勉強会では、日本有数の福祉の専門家である
  山井和則議員にもご参加いただき、
  子育て支援のあり方を議論するとともに、
  「社会を変える」ことの意味やその体制のあり方
  についても語り合っていきたいと思います。
  皆さんのご参加をお待ちしております。


  詳細お申込は上記URLにてご確認ください。



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  ●京都から、この国のかたちを変える。●
   第172号  2008.06.07 発行  (配信数:2645部)
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