第173号  2008.6.25


   ◆ 通常国会を終えて ◆
    〜霞が関・タクシー問題の本質はどこにあるのか〜


  皆さん、こんにちは。
  松井孝治です。

  先週土曜日をもちまして、長い通常国会が終了しました。

  昨年 秋の臨時国会が越年し、
  自民党大会、民主党大会の両日のみが閉会日でしたので、
  事実上 昨年秋から280日余りの間、
  国会は 開きっぱなしの状態でした。

  議員生活7年間で このような経験は初めてで、なおかつ、
  初の「次の内閣」の「閣僚」としての経験でもあり、
  正直申し上げて いろいろ疲れることもありましたが、
  同時に充実した一年でも ありました。

  ◆私は、昨年10月12日付けのメルマガ

   要は、安倍政権の失敗の検証をしっかりと行い、
   同時に、われわれと彼らの共通の問題意識
   すなわち

   ・官邸主導の各種取り組み、
   ・官邸スタッフへの民間専門家・意欲ある官僚の積極的な登用、
   ・安倍政権の当初の問題設定の正しさと
    その後の運営の失敗の典型である公務員制度改革の
    具体案の策定

   などを含めて
   さらにバージョンアップをした政権運営戦略、
   政官関係を構築する必要があると考えています。

   特に、私は、これから半年ほどの間で、
   天下り根絶策にとどまらず、
   総合的かつ本質的な 公務員制度改革案を
   作り上げていくことが 自分の任務だと考えています。

   現役の官僚諸氏も含めて 多くの方々の
   具体的なご意見にも 耳を傾けながら、
   官僚が、
   真に国益(さらにはグローバルな公益を含めて)のために
   存分に働けるような 制度改革の議論を行っていきたい
   と存じますので、
   皆様の積極的なご意見を お待ちしております。

   と申し上げました。


 ◆前回、前々回のメールマガジンで申し上げたように、
  国家公務員制度改革基本法案を修正合意できたことは、
  私の政治家としての活動の中で 大きな一ページでありましたし、

  同時に 
  日本の公務員制度の歴史の中でも 大きな一歩だと思います。

  マスコミ論評では とかくの批判がありますが、
  5月に問責決議案が提出されなかったことは、
  個人的には(そして公務員制度にとっても)大きな僥倖であり、
 
  4月下旬から5月末にかけて
  これまで議論してきた公務員制度改革のあり方を、
  与野党の垣根を超えて、
  きちんと関係者が分析・協議できたこと、

  さらに合意内容を、
  6月の上旬にきちんと国会で議論できたこと

   6月3日 内閣委員会議事録
   6月5日 内閣委員会議事録

  は大きな収穫でありました。


  もちろん改革は、はじめの一歩を踏み出したばかりであり、
  これからが本番です。

  これからも皆さんのご意見に耳を傾けながら
  改革を進めていきたいと思います。


 ◆このほかこの通常国会では、
  06年に私が参議院内閣委員会でとりあげた
  違法有害サイト問題についても 
  与野党協議が行われ、法案が成立しました。

  この点は、
  次号以降のメールマガジンでご紹介させていただきます。


 ◆さて、本日は、
  最近話題の霞が関のタクシー問題について
  触れたいと思います。


  この問題については、やや表面的な議論が目立つので、
  前号で一言申し上げた以外、
  あえてコメントしていませんでしたが、

  元官僚で現在海外在住の友人から
  メールをもらったことを契機に
  その問題提起をご紹介し、若干のコメントを加えます。


  ☆☆☆ 引用 ☆☆☆

   小生は仕事帰りに個人タクシーを使ったことは
   ほとんどないので、
   あんな実態があるとは知りませんでした。
   確かにおかしな話だと思いました。
   他方、ちょっと割り切れない感じもします。

   想像するに、国民一般は
   「そもそも役人がタクシーで帰ること自体贅沢だ」
   と思っているのではないでしょうか。

   したがって、その車内で「接待」されるなど論外、
   ということでしょう。

   ご存知のとおり、
   役人がタクシーで帰る必要がある理由のひとつは国会対応です。
   (もちろん、ほかにも予算折衝とか各省折衝とかありますが。)

   確かに、国会がある時期は
   「終電があるので帰ります」とは言えない、
   というのは霞ヶ関の(少なくとも私がいた頃の)常識です。

   小生は、各省のタクシー予算を
   大幅に減らしてもよいと思うのですが、
   その前提は、
   (たとえば)勤務時間(18時まででしたっけ?)
   を過ぎたら、翌日分の質問は受け付けないこととすることです。

   しかし、ただ「そういうことになった」
   などと事務的に国会内で連絡するのみでは、
   役人はもたないことは貴兄ご存知のとおりです。
   (貴兄が内閣参事官室に居たことはちゃんと覚えています。)

   時間を過ぎて入った質問に対して翌日、
   「時間を過ぎていたのでお答えできません」
   などと答弁しては 大変なことになると皆知っているからです。

   したがって、たとえば、閣議なり国会合意なりをもとに、
   勤務時間を過ぎたら内閣参事官室が質問を受け付けず
   (つまり「質問取り」にいかず)、
   内閣参事官室を通さない質問も認めない、
   としてはどうでしょうか。(注1)
   (対大臣質問も内閣参事官室に登録だけさせたらよいと思います。)

   
   質問が夜中に出ることを黙認しておいて、
   タクシー問題を叩くのは、ちょっとフェアでないと思います。

   (注1)
    本当は、そもそも、質問を役所に「通告」しないと
    国会質疑が成立しない、ということ自体おかしな話なのですが、
    これはずっと深遠な議論なので、今日は立ち入りません。

   ☆☆☆ 引用終わり ☆☆☆


  私も、官僚生活17年半で、数え切れないほど、
  深夜2時、3時にタクシーで退庁していますが、
  上記の友人同様、こうした実態があることを
  この問題が表面化するまで全く存じませんでした。
  報道等によると、
  タクシーでの接待や金品提供は日常化していたとのことですが、
  私にとっては、率直に言って、驚きでした。

  私が退職したのはもう8年近く前のことですので、
  或いは、最近はそのような接待が常態化しているのかとも思い、
  何人かの信頼すべき官僚に聞いてみましたが、
  少なくとも私の親しい官僚たちはそんな経験したことない
  と口々に否定していました。

  今、各省で調査が進められており、
  その結果も待たなければいけませんが、
  私には、必ずしも、多数の官僚が、
  報道事例と同様の接待を受けていたとは思えません。

  というのも、官庁の一般的なタクシー利用方法では、
  個別のタクシー運転手が 特定のお客さんに
  自腹でサービスを行う必然性が全くないからです。

  私の、そして多くの官僚たちの経験で申し上げると、
  基本的に、法人タクシー
  (霞が関では個人タクシーより法人タクシーが一般的だと思います)
  を利用する場合、深夜の退庁時に、
  部下(新人)の職員などが、
  タクシー会社の無線配車センターに電話して、
  タクシーを職場に呼ぶわけですが、
  
  その時点で、配車センターから、
  5分で○○番の車がお迎えに上がります
  というような連絡があり、

  ○○さんは、○○番の車、
  △△さんは△△番の車に乗ってくださいと
  部下に言われた車に乗って退庁するわけです。
  (私も新人時代は、上司のタクシーを呼んで、
   一緒に相乗りして帰るのが日課という時期がありました)

  こうした場合、職員が乗るタクシーは
  全くランダムに割り当てられるので
  職員と特定の運転手さんがつながるということは
  一般的にはありえないわけです。

  ところが、今回の財務省などの場合は、
  まず利用するタクシーが個人タクシーであることが、
  法人タクシーを利用する場合との大きな違いであり
  (法人と異なり無線配車に加入していなかったり、
   しめつけが緩いと思われる)

  なおかつ、最近の携帯電話の普及等の事情により、
  個別の職員とタクシー運転手との関係でつながり(囲い込み)
  が出来やすい状況になっていたこと、など
  (推測ですが、係長クラスなど、自分でタクシーを呼ぶことが
   不自然でない立場の職員の場合が多かったのではないか
   と思います)
  が問題の背景に存在すると思われます。

  いずれにせよ、
  毎回特定のタクシー運転手さんを呼び、その見返りとして
  現金や金券でバックリベートをもらうことは、
  やはり不正としか言いようがなく、厳正な処分が必要でしょう。

 ◆問題の本質

  そのことはそのこととして、
  この問題の本質は、友人のメールにもあるとおり、
  現在の官僚の残業の構造にあると思います

  自分の経験で申し上げれば、
  誰も、好き好んで深夜の2時、3時、4時まで
  職場に残って仕事をしてタクシーで帰宅したい
  と思っているわけではありません。

  どうしても翌朝までに 仕事を間に合わせなければならないので
  タクシーで退庁せざるを得ないわけです。

  どうしても翌朝までに仕上げなければならない
  仕事の代表事例は、
  友人の指摘のとおり、国会答弁作りです。

  なぜそんな遅い時間に作業しなければならないかというと、
  その理由の一つは、国会の質問通告が遅いからです。

  (事細かな国会答弁書や 想定問答を必要とする
   大臣(政治家)の資質の問題もありますが、
   この点は 政治家に勝手な答弁をされては困る
   という 官僚側の論理もあります)

  なぜ通告が遅いかというと、
  国会日程の調整が直前までつかず、
  ぎりぎりまで質問議員が決まらないことが多いこと、

  そして、質問者も、質問通告が遅れることが
  どれだけ多くの職員を待機させることになるか、
  彼らにどれだけの深夜労働を強いることになるかについて、
  多くの場合、実感が希薄だからです。

  よく、国会の答弁なんて、事前に通告せずに、
  政治家同志が自分の言葉で語り合えばよいのだ
  という議論をする方がいます。

  例えば、党首討論などは
  基本的にそのような流れでもよいのかもしれません。

  政治家がもっと政策について勉強し、
  官僚答弁を読まなくても
  発言できるようにしなければならない
  というのも、そのとおりだと思います。

  しかし、では大臣などの政策スタッフである官僚が
  答弁資料を作らなくて済むかというと、全くそうはなりません。

  特に、法案審議などの専門的分野の討議になると、
  政治家が自分の見識だけで答弁できるほど
  生易しいものではありません。
  (例えばこのメルマガに引用した、
   国家公務員制度改革基本法案の国会質疑録をお読みください。
   事前通告制度と事務方の作成した答弁書や参考資料抜きには、
   こうした議論を行うことは不可能です。)

  日本の政治の現状では、国会における政府答弁は、
  法律、政令、その他閣議決定に次ぐ、
  政府の公式見解と受け止められています。

  そうした「国会答弁観」を変更しない限り、
  仮に政治家ではなく、官僚である担当局長が、
  自分の専門分野について答弁する場合であっても、
  事前通告と答弁準備なく答弁することは一般的に困難です。


  要は、国会答弁に、
  これまで同様の「重み」を求める限りにおいては、
  われわれが政権を取ったとしても、
  野党議員の質問に対して、
  閣僚に自分の政治的見識のみに基づいて自由に発言させる
  などといった危ない橋を渡らせるわけには参りません。

  そんなことをしたら、どんなに優秀な閣僚であったとしても、
  あっという間に言質をとられて、
  過去の政府答弁との整合性、
  あるいは他の閣僚の答弁との整合性を失い、
  政府見解の矛盾や閣内不一致を追及され、
  窮地に立たされること間違いないと思います。


  要するに、私が申し上げたいのは、

  ○ タクシーの不正利用は厳に慎まなければならないことは当然。

  ○ 官僚のタクシー使用を減らすためには、
    国会の質問通告ルール、
    委員会設定のあり方全体を見直すことが必要。
    (わが友人が提案するような形にするのは、
     そう容易ではありませんが、一案ではあります。)

  ○ 官僚側も、効率よく仕事を行い、
    深夜残業はまだまだ見直す余地はある。

  ○ 各省折衝などは官僚任せにせず、もっと閣僚など政治家が
    責任をもって取り組む必要がある。

  しかし、

  ○ 国会答弁の重要性などにかんがみれば、
    官僚の深夜残業を ゼロにすることは不可能であり、
    また不適切。

  ○ 深夜残業の中には、国際会議・交渉のバックアップや
    法令案の策定作業など必要不可欠のものも多い。

  ということです。


 ◆私が心配するのは、現在の官僚のタクシー騒動が、
  表面的な事象のみを追いかけた挙句、
  ただでさえ、やる気を失いつつある、官僚たちに
  追い討ちをかけ

  「残業手当もろくに出ないけれど、
   仕事が重要だと思って一生懸命深夜残業をしているのに、
   残業後、タクシーでの帰宅も許されないような、
   社会的にその程度にしか見られていない、そんな仕事に
   いつまで自分達は汗をかき続けなければならないのだろうか」

  という気持ちにさせることです。


  私もも係長や課長補佐時代に月に200時間の残業をして、
  連日深夜に帰宅するような時期が長期間ありました。
  できることならタクシーでなく、終電で帰りたいと、
  地下鉄に駆け込んだことも数限りなくありました。
  
  今思えば、権限折衝など
  省益追求のための無駄な仕事も多かったですが、
  少なくとも、自分は公益のために仕事をしているという
  誇りがあったから、それなりに意義のある仕事もできたし、
  何とか激務の中でも心身ともにもっていたと思います。  
  
  それを今は 深夜残業でタクシーを使うことが
  何か罪悪のように取り上げられ、
  終電に駆け込む官僚の姿をテレビカメラが追う。
  
  確かに無駄な仕事も多いだろうし、
  一部の不正は糾弾に値します。
、 今ほど官僚が 自らの襟を正すことが
  社会的に求められている時期はない、
  そのことは事実です。
  
  しかし、官僚に限りませんが、なんでも十把一絡げにして、
  その職業にネガティブなレッテルを貼るということが
  将来にどのような結果をもたらすのかは、
  冷静に考えるべきです。
 
  国のためと思って、
  昼夜を問わず真面目に頑張っている多くの人間に、
  自分達は、なんでここまで頑張って、
  しかも、社会的には、世間から
  馬鹿にされるような思いをしなくてはならないのか、

  仕事がばかばかしくなってしまうような、
  そんな風潮を作り出してはいないでしょうか?


  今、心ある官僚たちも含めて、
  官僚という職業に 誇りを失わせる方向に 
  余りにも急速に世の中が進みつつあることは、
  特に 官僚をスタッフとして使いこなさなければならない
  政治家こそが 危機感をもって受け止めるべき 事実です。

  だからこそ、冒頭に申し上げた国家公務員制度改革を実現し、
  内外から人材を登用し、生え抜き官僚にも
  民間の感覚や刺激を与えていくし、
  民間の方々にも、官僚の仕事の苦しさの一端を
  理解いただくことが必要だと思います。

  そして、もう一度、

  内閣を支える各省庁のスタッフという職業を、
  官民を問わず、それぞれの分野で、
  最優秀・最先端の能力・経験を有する者が集って、
  すぐれた法案や国の政策を作り上げていく、
  やりがいと責任のある職業なんだ 
  という共通認識を作り上げること、
  官僚に誇りと使命感を 取り戻すことが
  必要になっていると思います。

  
  本当は、本日、同じ友人からの、
  サマータイムに関する意見を紹介し、
  それにコメントする予定でしたが、
  長くなりましたので、次回にします。

 ◆ おしらせ ◆

  京都からこの国のかたちを変える会
  第5回シンポジウム

  とき      7月13日(日) 14時〜16時
  ところ    リーガロイヤルホテル京都 2F
  テーマ   「社会を変える」を仕事にする
  講師    駒崎弘樹さん
  参加費  無料(飲食は伴いません)

   素晴らしい若者を発見しました!
   駒崎さんのような人物こそ、日本の「公共」の
   明日を担う人物です。
   是非おいでください(松井記)

  お若いながらも、地域に根ざした発想と熱意、
  そして抜群の行動力で、現在、「社会起業家」として、
  病児保育という困難な仕事にNPOとして取り組んでおられる
  駒崎弘樹さんをお招きします。

  駒崎さんは、官僚や政治家ではなく、
  社会起業家として社会のあり方を変えるため、
  病児保育という困難な事業に取り組んでおられます。

  今回の勉強会では、日本有数の福祉の専門家である
  山井和則議員にもご参加いただき、
  子育て支援のあり方を議論するとともに、
  「社会を変える」ことの意味やその体制のあり方
  についても語り合っていきたいと思います。
  皆さんのご参加をお待ちしております。


  詳細お申込は上記URLにてご確認ください。




==========================================================
  ●京都から、この国のかたちを変える。●
   第173号  2008.06.25 発行  (配信数:2543部)
  ●松井こうじ後援会事務所
   〒604-8141 京都市中京区蛸薬師通高倉西入
             泉正寺町334 日昇ビル5階
            TEL:075-213-6648 FAX:075-213-6645

  【松井こうじオンライン】 http://www.matsui21.com
  [ご意見、ご感想は…] info@matsui21.com

  ●転載を歓迎します。皆様の周囲で是非お広めください。
   その際、宜しければメールにてご連絡ください。
    Copyright(C)2001 Koji Matsui All rights reserved


<第173号  2008.6.25発行>

     
 +-+-Copyright Koji Matsui Official All Right Reserve.-+-+